アジアの人たちから見た日本の魅力とは?

日本は、アジアの人たちにとってどのような国に映っているのでしょうか。食文化、治安のよさ、清潔さ、アニメやマンガ、四季のある観光地、交通の便利さなど、日本にはさまざまな魅力があります。

一方で近年は、円安や相対的な賃金水準の変化によって、「働く国としての日本は以前より魅力が下がっているのではないか」という見方も出ています。

それでも、日本で働く外国人は増えています。厚生労働省によると、2024年10月末時点の外国人労働者数は230万2,587人で、届出が義務化された2007年以降で過去最多となりました。

観光でも、2025年の年間訪日外客数は4,268万3,600人と過去最高を更新しています。数字を見る限り、日本は「選ばれなくなった国」ではなく、条件の変化を受けながらも、なお選ばれ続けている国だといえます。

この記事では、“働きたい国”としての日本の立ち位置を整理し、円安が日本のイメージにどのような影響を与えているのかを探り、最後にそれでもなお日本が選ばれる理由を、仕事と暮らしの両面から考察します。

日本はアジアの人たちにとって「働きたい国」なのか?

「日本はアジアの人たちに選ばれているのか」という問いに答えるには、感覚ではなく調査データを見ていく必要があります。

ただし、この種のランキングは、調査対象の国や地域、設問の作り方によって順位がかなり変わります。ここでは、公開されている調査資料をもとに、日本の現在地を見ていきましょう。

公開調査で日本は上位に入ることが多い

パーソル総合研究所の2022年調査では、18カ国・地域の主要都市で聞いた「働いてみたい国・地域」の全体平均トップ5は、1位アメリカ、2位日本、3位イギリス、4位カナダ、5位シンガポールでした。

少なくともこの公開調査では、日本は上位グループに入っています。

また同調査では、東南アジアのタイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナムや、台湾、香港で、日本は「働いてみたい国・地域」の上位に挙がるとされています。

つまり、日本はアジアの中でまったく候補に入らない国ではなく、依然として有力な選択肢の一つと見られていることがわかります。

日本の優位は以前ほど強くない

一方で、同じパーソル総合研究所の調査では、2019年と比べてタイ、ベトナム、台湾では「日本で働いてみたい」と考える割合が10ポイント以上低下したとされています。

日本は今も魅力的な候補ではあるものの、以前と比べると“圧倒的に選ばれる国”とは言い切りにくくなっています。

この変化の背景には、他国の賃金上昇、キャリア機会の多様化、そして日本の円安や賃金の見え方の変化があります。

つまり、日本は人気を失ったというより、競争相手が増え、比較される目線が厳しくなったというのが実態に近いでしょう。アジアの求職者から上位候補として見られ、関心が依然と高いことは調査から読み取れます。

参考:グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)| パーソル総合研究所

円安はアジアの人たちの日本イメージをどう変えたのか

近年の日本を語るうえで、円安は避けて通れません。観光の面では「日本旅行がお得」と感じられやすい一方、就労の面では「日本で働いても思ったほど稼げない」と見られることがあります。

ここでは、円安が日本の魅力に与えている影響を、仕事と観光の両面から見ていきましょう。

働く国としては不利に見られやすい

大手人材企業が2025年に日本在留外国人を対象に行った調査では、「日本で働きたくない理由」として最も多かったのが「円安」で35.5%でした。

次いで「給料が低い」が26.3%、「他国の方が稼げるから」が10.5%となっており、収入面の見え方が日本の弱みになっていることがうかがえます。

特にアジアでは、送り出し国側の経済成長や賃金上昇も進んでいます。そのため、日本での月給を自国通貨に換算したときの魅力が以前より下がったと感じる人は少なくありません。

かつては「日本で数年働けばしっかり送金できる」というイメージが強かったとしても、円安の局面ではその印象が弱まりやすくなります。

それでも「日本で働きたい」人は多い

ただし、円安があるからといって、日本の就労魅力が消えたわけではありません。前述の大手人材企業の調査では、在留外国人の92.3%が「引き続き日本で働きたい」と回答しています。

賃金面の不安はありつつも、日本で働くこと自体への意欲は高いままだといえるでしょう。この結果は、日本が単に「お金だけで比較される国」ではないことを示しています。

収入以外の魅力、たとえば生活の安定、社会の安全性、仕事のやりやすさ、文化的な親しみやすさがあるからこそ、円安下でもなお選ばれていると考えられます。

観光では円安がむしろ追い風になっている

観光面では、円安は日本への追い風として働いています。

日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の年間訪日外客数は4,268万3,600人で過去最高となり、東アジアでは韓国、台湾、東南アジアではマレーシア、タイなどの増加が押し上げ要因になったとされています。

つまり、就労先としての日本には「賃金面の弱さ」が見えやすい一方、旅行先としての日本には「今なら行きやすい、お得に楽しめる」という印象が強まりやすいのです。

この二面性を理解しておくと、今の日本がアジアの人たちにどう映っているかをより正確に捉えられます。

参考:​​外国人労働者の日本離れは起きている?データで見る現実と将来のリスク|サポネット

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それでも日本が選ばれる理由

円安や相対的な賃金の課題があるにもかかわらず、日本はなぜなお選ばれているのでしょうか。その答えは、給与だけでは測れない魅力がいくつもあるからです。

この章では、日本がアジアの人たちにとって魅力的に映る理由を、代表的なポイントごとに見ていきましょう。

食文化の魅力はやはり大きい

日本の魅力としてまず挙げられるのが、食文化です。日本政府観光局(JNTO)の台湾市場向け資料では、日本食は訪日前の期待値が高く、訪日旅行の大きな目的の一つになっているとされています。

また、観光庁の関連資料でも、他国と比較して「観光のために日本を訪問したい理由」として「清潔だから」の評価が高いことが示されており、食事の安心感や衛生面の印象ともつながっています。

寿司、ラーメン、焼肉、和菓子のような定番だけではなく、地域ごとの食の多様さも日本の強みです。

アジアの人たちにとって、日本は「おいしいものが多い国」であるだけでなく、「安全で、きれいで、安心して食事を楽しめる国」としても映っています。

観光での好印象は、長く暮らす国としての安心感にもつながりやすいでしょう。

安心安全で清潔な環境が暮らしやすさにつながる

日本の治安のよさ、街の清潔さ、交通の正確さは、アジア各地から高く評価されやすい要素です。

日本政府観光局(JNTO)の台湾市場向け資料では、日本の一般的なイメージとして「清潔」「治安が良い」「便利」「高い生活レベル」「就業環境の良さ」などが挙げられています。

タイ市場向け資料でも、日本の鉄道やバスなどの公共交通機関は安全で時間に正確だと知られているとされています。

働く国を選ぶとき、給与はもちろん重要ですが、安心して暮らせるかどうかも大きな判断材料です。

深夜でも比較的移動しやすいこと、公共空間が整っていること、生活ルールが明確であることは、外国人にとって日々のストレスを減らす要因になります。

こうした「生活のしやすさ」は、数字で比較しにくい一方で、日本の大きな競争力です。

アニメやマンガなどの文化的な親しみが強い

日本のサブカルチャーやポップカルチャーも、日本への関心を高める大きな入口です。

文化庁は、マンガ、アニメ、特撮、ゲームが海外からも高い人気を得ている日本を代表する文化であり、訪日観光の促進にも貢献していると説明しています。

外務省も、アニメ作品を日本そのものへの関心につなげる取組を行ってきました。

アニメやマンガは、単なる娯楽にとどまりません。日本語や日本文化に興味を持つきっかけになり、旅行したい、留学したい、働いてみたいという気持ちにつながることがあります。

特に若い世代にとっては、日本は「遠い国」ではなく、作品を通じて日常的に触れている身近な国として感じられている面があります。

観光資源の多様さが「日本で暮らしてみたい」につながる

日本は観光地としての魅力も非常に幅広い国です。

日本政府観光局(JNTO)や国土交通省の資料では、日本に対して「豊かな伝統文化と歴史がある」「美しい景色と自然がある」「食事・料理がおいしい」「安全、清潔である」といった肯定的イメージが挙がっています。

さらに、観光庁の予算資料でも、生活文化、建築観光、マンガ・アニメなど、文化資源を活用したインバウンド施策が重視されています。

旅行先として何度も訪れたくなる国は、働く場所としても関心を持たれやすいものです。

東京や大阪の都市的な魅力だけでなく、京都の歴史、北海道の自然、福岡の食や暮らしやすさのように、地域ごとに表情が異なることも日本の強みです。

「一度行って好きになったから、今度は長く住んでみたい」と感じる人が出てくるのは自然な流れでしょう。

参考:外国旅行の動向|日本政府観光局

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アジアの人たちにとって、日本はどんな国として映っているのか

ここまで見てきた魅力をまとめると、日本は「稼ぐためだけの国」ではなく、「安心して暮らし、文化を楽しみながら、長く関わりたくなる国」として映っていると考えられます。

最後に、アジアの人たちの目に映る日本像を、仕事・生活・感情面の3つの切り口で見ていきましょう。

収入面ではシビアに見られている

まず現実的に言えば、日本は賃金面だけで見れば以前ほど強い国ではありません。円安の影響もあり、「以前なら日本が第一候補だったが、今は他国とも比較する」という見方は増えています。

実際に、在留外国人調査では円安や給料の低さが日本で働きたくない理由として上位に挙がっています。

この点は、受け入れ側も冷静に認識する必要があります。日本は「来てくれて当然」の国ではなくなっており、給与だけでなく働きやすさや生活支援、キャリア形成まで含めて魅力を示すことが求められています。

それでも暮らしやすさと安心感では強い

その一方で、日本には他国と比べてもなお強い魅力があります。治安のよさ、清潔さ、便利さ、公共交通の正確さ、食の安心感、文化の多様さは、日常生活の満足度に直結します。

こうした要素は、月給の額面だけでは置き換えられない価値です。特に、初めて海外で暮らす人にとっては、生活の予測可能性が高いことは大きな安心材料です。

ルールが比較的明確で、公共サービスや交通網が整っている日本は、「大きく稼げる国」とは別の意味で魅力のある国だといえます。

感情的な親近感も日本の強みになっている

日本は、文化的な親近感のある国として見られている面も強いです。たとえば台湾における2024年度の対日世論調査では、「台湾を除き最も好きな国・地域」として日本を挙げた人が76%で過去最高でした。

こうした好感度は、観光や留学、就労への心理的ハードルを下げる要因になります。

もちろん、アジア全体をひとくくりにはできませんが、日本に対して「親しみがある」「文化的に興味がある」「旅行でよい印象を持った」という感情が、働いてみたい気持ちにつながるケースは少なくありません。

このように日本は、数字だけでは測れない“好きだから行ってみたい国”という強みを持っています。

参考:2024 年度台湾における対日世論調査|日本台湾交流協会

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まとめ

アジアの人たちから見た日本は、円安や相対的な賃金の弱さによって、以前ほど“稼げる国”とは見られにくくなっている面があります。

実際、公開調査でも日本への就労希望は一部地域で低下しており、在留外国人の調査でも円安や給料の低さが不安材料として挙がっています。

それでも、日本がなお選ばれているのは、食文化、安心安全で清潔な環境、アニメやマンガなどの文化的魅力、観光資源の多様さ、交通の便利さといった、生活全体の満足度につながる魅力があるからです。

外国人労働者数が過去最多を更新し、訪日客数も記録を伸ばしていることは、その現れの一つだといえるでしょう。

つまり日本は、単純な給与比較では不利になりつつあっても、なお「住んでみたい」「働いてみたい」「関わり続けたい」と思わせる力を持つ国です。

これからの日本に必要なのは、かつての優位を前提にすることではなく、安心して働ける環境、暮らしやすさ、文化的な魅力をきちんと伝え、選ばれる理由を磨き続けることなのかもしれません。

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