特定技能外国人の採用を検討する際、「受け入れまでにどのような費用がかかるのか」「登録支援機関へ支払う料金を含めると総額はいくらになるのか」と疑問を持つ企業担当者は少なくありません。費用の全体像が分からなければ、社内予算の確保や、国内採用を含むほかの人材確保策との比較も難しくなります。
一方、特定技能外国人の受け入れ総費用について、公的機関が全国共通の平均額や中央値を示しているわけではありません。この記事では、特定の金額を一律の相場として示すのではなく、受け入れ費用の内訳、企業ごとに差が生じる理由、見積りを適切に比較するための考え方を解説します。
※本記事の内容は公開・更新時点の情報に基づいています。関係法令、申請手続、支援基準、分野別要件などは更新される可能性があるため、実際の受け入れに際しては、出入国在留管理庁および各分野を所管する省庁の最新情報をご確認ください。
特定技能外国人の受け入れ費用に一律の相場がない理由

特定技能外国人の受け入れ費用は、採用経路、本人の在留状況、住居の準備、支援の実施方法などによって変わります。インターネット上で紹介されている金額だけを見るのではなく、どのような条件とサービス内容を前提に算出されたものかを確認することが大切です。
公的な全国平均額や中央値は公表されていない
2026年8月時点で確認できる出入国在留管理庁などの公的資料では、特定技能外国人1人当たりの受け入れ総費用について、全国共通の平均額や中央値は公表されていません。出入国在留管理庁は受入れ機関の基準や1号特定技能外国人への支援内容を示していますが、民間の人材紹介会社や登録支援機関が設定する料金を一律には定めていないためです。
したがって、民間事業者が掲載する「費用相場」は、公定価格ではなく、各社のサービス内容や取引実績などを基にした参考情報として捉える必要があります。記事や見積書に記載された金額を確認するときは、採用国、対象分野、在留申請、住居、支援の範囲などが含まれているかを確認しましょう。
国内採用か海外採用かで必要な費用が異なる
日本国内に在留する外国人を採用する場合は、海外から新たに呼び寄せる場合と比べ、航空券や入国時の国内移動に関する費用を抑えられる可能性があります。ただし、在留資格変更、転居、住居契約などが必要であれば、国内採用でも一定の初期費用が発生します。
海外から採用する場合は、候補者の募集、現地での手続、書類の翻訳、渡航、入国後の生活準備など、関係する業務が増える傾向にあります。採用国や紹介事業者によって対応範囲が異なるため、国内採用と海外採用の金額を単純に比較することはできません。
支援を自社で行うか委託するかでも変わる
特定技能1号の受入れ企業は、外国人が日本で安定的かつ円滑に生活・就労できるよう、1号特定技能外国人支援計画を作成し、必要な支援を実施しなければなりません。支援は一定の要件を満たす企業が自社で行うほか、登録支援機関へ全部を委託する方法もあります。
自社で支援すれば外部への委託料を抑えられる可能性がありますが、担当者の人件費、通訳費、面談や公的手続への同行時間などが必要です。委託費用と自社支援を比較する場合は、請求書に表れる金額だけでなく、社内で発生する人件費と業務負担も含めて判断しましょう。
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採用から入社までに発生する初期費用
特定技能外国人の採用では、候補者の募集、面接、在留申請、渡航、住居の準備など、入社前後に複数の費用が発生します。採用が成立した場合の料金だけでなく、候補者の辞退や申請不許可が生じた場合の取扱いも確認することが重要です。
人材募集・紹介に関する費用
人材紹介会社を利用する場合は、候補者の募集、面接調整、雇用条件の説明などに対する紹介手数料が発生します。料金体系には、採用者1人当たりの定額制、想定年収に連動する成功報酬型、在留申請や入社支援を含むパッケージ型などがあります。
海外採用では、現地の送出機関や提携機関が候補者の募集や事前教育を担う場合もあります。どの事業者が何を担当し、企業と本人のどちらが費用を負担するのかを明確にするとともに、本人に過度な負担を課す保証金や違約金契約がないか確認することが必要です。
採用段階で発生する主な費用には、次のものがあります。
- 人材紹介手数料
- 求人広告や募集に関する費用
- 面接会場やオンライン面接の準備費
- 通訳・翻訳費
- 技能確認や適性検査の費用
- 海外面接を行う場合の渡航・宿泊費
在留申請や書類作成に関する費用
採用する外国人の状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請などが必要です。企業が自社で書類を準備する場合にも、必要資料の収集、雇用条件の確認、申請後の追加資料への対応などに担当者の工数がかかります。
行政書士などへ書類作成や申請取次を依頼する場合は、専門家への報酬が発生します。登録支援機関が生活・就労支援を担当する場合でも、在留申請書類の有償作成や申請取次を依頼するときは、行政書士等の適法な資格や申請取次資格を持つ者が対応するか確認しましょう。
| 確認項目 | 見積りで確認する内容 |
| 申請の種類 | 認定証明書交付申請・在留資格変更など |
| 基本業務 | 書類作成や申請取次を含むか |
| 追加対応 | 入管からの追加資料要求に対応するか |
| 不許可時 | 再申請や料金返還の取扱い |
| 企業側の作業 | 自社で用意する資料と作業範囲 |
渡航・住居・生活準備に関する費用
海外から来日する場合は、航空券、手荷物料金、空港から住居までの移動などに費用がかかります。航空券は時期や予約条件によって金額が変わるため、変更や取消しが発生した場合の負担も契約前に整理しておきましょう。
住居については、敷金・礼金、仲介手数料、保証会社の利用料、家具・家電、寝具、通信環境などの初期費用が考えられます。企業が社宅を用意し本人から家賃等を受け取る場合は、負担額と内訳を明確にし、不当に高額な請求や不透明な給与控除を避ける必要があります。
入社前後に想定される主な準備費用は、次のとおりです。
- 航空券や国内交通費
- 出入国時の送迎費
- 賃貸住宅の契約費用
- 家具・家電・寝具
- 水道・電気・ガスの開始費用
- 携帯電話や通信環境
- 初回給与までの生活準備
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入社後に継続して発生する費用

特定技能外国人の受け入れ費用は、入社時に一度支払えば終わるものではありません。支援委託料、日本語教育費、社内研修費、社会保険料など、雇用期間中に継続して発生する費用も含めて予算を組む必要があります。
登録支援機関への支援委託料
1号特定技能外国人への支援には、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保に関する支援、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談対応、定期面談などがあります。登録支援機関へ委託する場合は、これらの支援をどの範囲まで基本料金で実施するのかを確認しなければなりません。
同じ月額料金であっても、母国語相談、公的手続への同行、病院対応、夜間・休日の緊急対応、訪問時の交通費などが別料金となる場合があります。料金だけでなく、対応回数、受付時間、対応言語、担当者不在時の体制まで確認すると、実際の年間負担を判断しやすくなります。
委託契約では、次の項目を確認しましょう。
- 義務的支援の実施範囲
- 対応できる言語
- 相談受付の曜日と時間
- 訪問・同行の回数上限
- 交通費や遠距離対応費
- 夜間・休日の緊急対応
- 各種届出に関する支援
- 退職・転職・一時帰国時の対応
日本語教育・業務研修に関する費用
特定技能1号の外国人は、試験や技能実習からの移行要件などにより、一定の技能と日本語能力を持つことが確認されています。しかし、試験に合格していることと、自社独自の機械、作業手順、安全基準、接客方法を入社初日から理解していることは同じではありません。
企業には、日本人社員を採用した場合と同様に、入社時研修やOJTを行うことが求められます。外部の日本語講座、オンライン教材、指導担当者の人件費なども、採用後に発生する受け入れ費用として見積もりましょう。
職場で必要となる日本語の例は、次のとおりです。
- 安全に関する指示
- 作業手順や器具の名称
- 報告・連絡・相談
- 異常や体調不良の伝え方
- 顧客や利用者への応対
- 就業規則や給与明細の理解
賃金・社会保険・労働保険の負担
特定技能外国人の報酬額は、日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上であることが求められます。比較対象となる日本人がいない場合も、賃金規定、近い業務を担当する社員との責任の違い、年齢や経験などを踏まえ、報酬の妥当性を説明できるようにする必要があります。
外国人労働者にも労働関係法令や社会保険関係法令が適用され、加入要件を満たす場合は健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの手続が必要です。企業は給与だけでなく、事業主負担分の社会保険料、残業代、通勤手当、賞与、昇給などを含めて総人件費を計算しましょう。
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特定技能外国人の費用見積りを比較するポイント
複数の事業者から見積りを取得すると、費用とサービス内容の違いを把握しやすくなります。ただし、採用国、支援内容、住居の有無などの条件が異なる見積りを並べても、価格差の理由を正確に判断することはできません。
初期費用と継続費用を分けて確認する
見積書では、採用時に一度だけ発生する費用と、入社後に毎月または定期的に発生する費用を分けてもらいましょう。初期費用が安くても月額委託料や追加料金が高ければ、年間総額では別の事業者を上回る可能性があります。
特定技能外国人の受け入れ費用は、次のように時期別に整理すると全体像を把握しやすくなります。
| 発生時期 | 主な費用 | 確認したいポイント |
| 採用前 | 紹介・募集・面接・通訳 | 辞退時の費用や返金 |
| 申請時 | 書類作成・申請取次 | 追加資料対応の有無 |
| 入社時 | 渡航・送迎・住居・生活用品 | 企業と本人の負担区分 |
| 入社後 | 支援委託・教育・通訳 | 月額料金と追加料金 |
| 雇用期間中 | 賃金・保険・更新対応 | 昇給や手続時の負担 |
初年度だけでなく、2年目以降に必要となる費用も試算してもらうことが大切です。在留期間更新、転居、一時帰国、退職などが発生した場合の費用も確認しておくと、予算外の支出を抑えやすくなります。
基本料金に含まれる支援内容を確認する
見積書に「支援一式」と記載されていても、対応範囲は登録支援機関によって異なります。定期面談、母国語相談、公的手続への同行、日本語学習支援、住居トラブルへの対応などについて、回数や受付時間を具体的に確認しましょう。
登録支援機関は多数存在し、登録簿は随時更新されています。料金の安さだけで選ばず、自社の対象分野に関する経験、対応地域、相談言語、担当者数、緊急時の連絡体制なども比較する必要があります。
登録支援機関を比較する主な視点は、次のとおりです。
- 対象分野に関する支援経験
- 外国人本人の母語への対応
- 企業と本人への連絡頻度
- 担当者不在時の代替体制
- 緊急時の連絡方法
- 対応できる地域
- 費用の明細と追加料金
- 企業側に求められる業務
返金規定・追加料金・契約条件を確認する
採用後すぐに本人が辞退・退職した場合、人材紹介料の一部返金や代替人材の紹介を受けられる契約があります。ただし、保証期間、返金割合、適用条件は事業者によって異なるため、「採用保証あり」という表示だけで判断してはいけません。
在留申請が不許可となった場合や、来日前に候補者が辞退した場合も、すでに実施された翻訳、書類作成、現地手続などの費用が返金されない可能性があります。次のような条件について、口頭説明だけでなく契約書や料金表で確認しましょう。
- 採用辞退・早期退職時の返金割合
- 代替人材を紹介する条件
- 申請不許可時の費用負担
- 夜間・休日対応の追加料金
- 遠方への訪問にかかる交通費
- 転居・退職・一時帰国時の料金
- 契約解除と料金改定の条件
適正な費用で特定技能外国人を受け入れる方法

受け入れ費用を抑えること自体は問題ではありませんが、必要な支援や法令上の手続まで削ることはできません。最安値を選ぶのではなく、必要な支援品質を確保しながら、重複する業務や自社で対応可能な範囲を見直すことが費用適正化の基本です。
自社対応と外部委託を切り分ける
社内に外国人雇用の経験者や多言語対応者がいる場合は、日常的な相談、日本語学習支援、職場での面談などを自社で行える可能性があります。一方、在留申請、母国語による専門的な相談、休日の緊急対応などは、適切な専門家や登録支援機関へ依頼した方が安定する場合もあります。
自社対応と外部委託を比較するときは、外部へ支払う料金だけでなく、社員が支援に使う時間を人件費として計算しましょう。支援担当者の負担によって残業が増えたり、本来業務が遅れたりする場合は、それも実質的な受け入れコストとなります。
各段階の担当を、次のように整理すると管理しやすくなります。
採用・雇用条件の説明
↓
在留申請と必要書類の準備
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入国・住居・生活開始の支援
↓
業務教育・日本語学習・相談対応
↓
定期面談・各種届出・定着支援
企業、人材紹介会社、行政書士、登録支援機関の誰が担当するかを工程ごとに明確にし、業務の重複や対応漏れを防ぎましょう。
同じ条件で複数社へ見積りを依頼する
複数社の見積りを比較する際は、採用人数、対象分野、採用国、国内・海外の別、住居の有無、委託したい支援内容を統一して伝えます。条件をそろえることで、価格差が支援品質によるものか、単に業務範囲が異なるだけなのかを判断しやすくなります。
最低でも、採用時の初期費用、1年間の継続費用、追加料金が発生する条件を分けて提示してもらいましょう。金額だけでなく、担当者の説明が明確か、質問に根拠をもって回答しているかも重要な判断材料です。
見積り依頼時には、次の条件を共通して伝えます。
- 採用予定人数と希望時期
- 対象分野と業務区分
- 国内採用か海外採用か
- 候補者の使用言語
- 住居を企業が用意するか
- 自社で実施できる支援
- 委託したい申請・支援業務
- 就業場所と支援拠点の距離
- 夜間・休日対応の必要性
採用後の定着まで含めて判断する
採用費用が安くても、外国人が短期間で退職すれば、新たな候補者の募集、在留手続、教育、住居準備などの費用が再び発生します。受け入れ費用は、採用時に支払う金額だけでなく、一定期間働いてもらうために必要な総投資として捉えることが重要です。
日本語教育、相談体制、明確な評価制度、適正な労働条件は、単なる追加コストではありません。本人が安心して働ける環境を整え、早期退職や職場トラブルを防ぐことで、採用への投資を中長期的に活かしやすくなります。
費用対効果を確認する際は、次の指標も参考になります。
- 採用から入社までに要した総費用
- 1人当たりの月間支援費
- 業務教育に要した時間と費用
- 退職・転職した人数
- 在留期間更新の状況
- 日本語能力や技能の向上
- 本人と現場担当者からの相談内容
- 採用後1年・2年の定着状況
まとめ
特定技能外国人の受け入れ費用について、公的機関が全国共通の平均額や中央値を示しているわけではありません。採用経路、在留手続、渡航、住居、登録支援機関への委託範囲などによって費用が異なるため、一つの「相場」だけを根拠に予算を決めることは避けるべきです。
企業は、採用・紹介費、在留申請費、入社準備費、支援委託料、教育費、賃金や社会保険料を分け、同じ条件で複数社の見積りを比較しましょう。価格の安さだけでなく、必要な支援、追加料金、返金規定、採用後の定着まで含めた総コストで判断することが、適正な受け入れにつながります。



