「これまで日本人だけで事業を運営してきたため、今後も同じ採用方針で問題ない」と考える企業は少なくありません。しかし、日本の人口構造を見ると、日本人の応募者を待つだけでは必要な人員を確保できない企業が、今後さらに増える可能性があります。
外国人雇用を検討する目的は、日本人を外国人へ置き換えることではありません。国内採用、シニア人材や女性の活躍、業務改善、省人化などに取り組んだうえで、それでも不足する人材を確保する選択肢の一つとして考えることが重要です。
この記事では、日本人採用だけに依存した場合に企業が直面し得る将来、労働力不足が経営に与える影響、外国人雇用の位置付けを解説します。危機感をあおるのではなく、公的統計に基づいて、自社の採用戦略を見直すための判断材料を整理しましょう。
※本記事の内容は作成あるいは更新時点の情報に基づいています。人口、雇用、外国人受入れ制度などに関する数値やルールは更新されるため、実際の採用計画を立てる際は、総務省、厚生労働省、出入国在留管理庁などの最新情報をご確認ください。
日本人採用だけでは人材を確保しにくくなる理由

日本人採用が直ちに不可能になるわけではありません。しかし、働く世代そのものが減少している以上、過去と同じ条件や採用方法で、同じ人数を確保し続けることは難しくなります。
企業は「応募が来ないのは求人広告の問題」と考えるだけでなく、採用市場全体で候補者が減っているという構造的な変化を理解する必要があります。
生産年齢人口はすでに減少している
総務省統計局の人口推計によると、2026年1月1日時点の総人口は約1億2,298万人で、前年同月より約57万人減少しました。15歳から64歳までの人口も約7,341万人となり、前年同月より約20万人減少しています。
生産年齢人口が減るということは、求人へ応募する可能性のある人の総数が縮小していくことを意味します。業績が好調で採用人数を増やしたい企業があっても、採用市場全体から必要な人材を集められるとは限りません。
内閣府は、生産年齢人口が2040年までに約1,200万人減少する見込みを示しており、労働力不足や経済規模の縮小、地域社会の担い手不足を課題として挙げています。
高齢者の就業拡大だけでは補い切れない可能性がある
日本では、働く意欲のある高齢者が活躍できる環境整備も進められています。2024年の労働力人口に占める65歳以上の割合は13.6%で、長期的には上昇傾向です。
シニア人材の活用は重要ですが、すべての業務を高齢者だけで担えるわけではありません。夜勤、重量物の取扱い、高温環境での作業、長距離移動など、身体的な負担が大きい仕事もあります。
高齢者、女性、子育て中の人、障害者など、多様な国内人材が働きやすい環境を整えることは必要です。ただし、それだけで将来の人員不足がすべて解消されると決めつけるのも現実的ではありません。
求人数が求職者数を上回る状態が続いている
厚生労働省によると、2025年度平均の有効求人倍率は1.20倍でした。求人倍率は景気や地域、職種によって変動するものの、ハローワークの求人数が求職者数を上回る状態が続いています。
求人倍率が1倍を超えていても、すべての企業が同じように採用難になるわけではありません。一方で、複数の企業が一人の求職者を取り合う構造になりやすく、知名度、給与、休日、勤務地、仕事内容などで競争力の弱い企業ほど採用が難しくなります。
「求人を出せば応募が来る」という前提から、「求職者に選んでもらう」という前提へ、人材採用の考え方を変える必要があります。
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日本人採用だけに依存すると企業はどうなるのか
日本人だけを採用する方針そのものが問題なのではありません。必要な人数を日本人だけで安定的に確保できている企業であれば、外国人を無理に採用する必要はないでしょう。
問題となるのは、採用実績が低下しているにもかかわらず、採用条件や人員計画を見直さず、日本人からの応募だけを待ち続けるケースです。
欠員が埋まらず既存社員へ負担が集中する
必要な人員を採用できない状態が続くと、既存社員が不足分を補うことになります。残業、休日出勤、担当業務の増加が続けば、疲労や不満が蓄積しやすくなるでしょう。
採用難が既存社員の退職につながり、さらに人手不足が進む悪循環も考えられます。一人が退職したことで、残った社員の負担が増え、次の退職者が出る状態です。
この問題は、求人広告を増やすだけでは解決できません。必要な業務の整理、待遇の見直し、教育期間の短縮、省人化、外国人を含む採用対象の拡大など、複数の対応が必要です。
受注や営業時間を制限せざるを得なくなる
人手不足が深刻になると、仕事の依頼があっても受けられなくなります。製造業では生産量を増やせず、建設業では受注を断り、宿泊・飲食業では営業時間や客室数を制限するといった影響が考えられます。
売上が伸びない原因が需要不足ではなく、働く人がいないことになるのです。設備や顧客を持っていても、業務を担当する人材がいなければ、事業機会を逃します。
採用を人事部門だけの課題として扱わず、売上、投資、出店、事業承継に関わる経営課題として捉える必要があります。
技能やノウハウを次世代へ引き継げなくなる
熟練社員が高齢化している企業では、退職前に若手へ技能を伝える必要があります。しかし、教える相手を採用できなければ、長年蓄積した技術やノウハウが失われる可能性があります。
人材不足が深刻になってから採用を始めても、すぐに熟練者と同じ仕事を任せられるわけではありません。採用後の教育期間を考えると、退職者が出る数年前から後継人材を確保する必要があります。
外国人材を採用する場合も同様です。単純な補助作業だけを担当させるのではなく、在留資格上認められる範囲で、将来必要となる技能を計画的に教える視点が求められます。
地方や知名度の低い企業ほど採用競争で不利になる
求職者が減少すると、勤務地や企業を選べる人の立場が強くなります。都市部の企業、大企業、知名度の高い企業へ応募が集中し、地方企業や中小企業が人材を確保しにくくなる可能性があります。
ただし、企業規模だけで採用の成否が決まるわけではありません。住居支援、通勤環境、仕事内容、キャリア、社内の雰囲気などを明確に示すことで、候補者から選ばれる余地はあります。
外国人材についても、「地方だから来てもらえない」と決めつけるのではなく、生活環境を含めた地域の魅力や支援内容を具体的に伝えることが大切です。
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外国人雇用は日本人雇用を置き換えるものではない

外国人雇用を検討する際、「日本人の仕事が奪われるのではないか」「賃金の安い労働力を入れるのではないか」といった懸念が生じることがあります。
外国人材を適正に雇用するには、日本人と同様に労働関係法令を守り、在留資格に応じた業務へ配置しなければなりません。外国人雇用は、安価な労働力を確保するための仕組みではありません。
国内人材の活用を進めたうえで検討する
外国人採用を始める前に、国内採用で改善できる点がないかを確認しましょう。
賃金が地域や職種の水準と比べて低くないか、休日を取得しやすいか、勤務時間が生活と両立しやすいか、求人票の説明が分かりやすいかなどを見直します。
同時に、業務のデジタル化、機械化、外注、作業手順の標準化などにより、必要人数そのものを減らせる可能性もあります。
こうした取組を行っても確保が難しい人材を補う方法として、外国人雇用を位置付けるのが適切です。
外国人労働者はすでに多くの職場を支えている
厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人、外国人を雇用する事業所数は37万1,215か所で、いずれも過去最多となりました。外国人労働者数は前年より11.7%増えています。
在留資格は、専門的・技術的分野、身分に基づく在留資格、技能実習、資格外活動、特定活動など多様です。外国人雇用は、一部の大企業や都市部だけに限られた取組ではなくなっています。
ただし、周囲の企業が採用しているという理由だけで始めるべきではありません。自社の業務に適した在留資格、受入れ体制、教育担当者、費用を確認する必要があります。
国籍ではなく仕事と能力で配置する
外国人材だから単純作業、日本人だから管理業務という固定的な配置は、本人の能力を生かせないだけでなく、定着の妨げになる可能性があります。
在留資格上認められる業務範囲を守りながら、本人の経験、日本語能力、技能、適性に応じて仕事を任せることが重要です。
技能が向上した場合は、評価や処遇へ反映する仕組みも必要です。外国人社員だけに不透明な評価基準を適用せず、日本人社員との公平性にも配慮しましょう。
外国人雇用で利用できる主な在留資格
外国人であれば、どのような仕事でも自由に担当させられるわけではありません。外国人が日本で働ける範囲は、在留資格によって異なります。
企業は「外国人を採用する」と一括りにせず、任せたい業務に合う在留資格を確認する必要があります。
特定技能
特定技能は、人材確保が難しい特定産業分野で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れる制度です。
特定技能1号では、原則として技能試験や日本語試験などで能力を確認します。受入れ企業には、適正な雇用契約や支援計画の実施などが求められます。
特定技能2号は、分野ごとに定められた熟練技能を持つ人が対象です。在留期間の通算上限がなく、要件を満たせば配偶者や子の帯同も認められます。
育成就労
育成就労制度は、2027年4月1日から始まります。人手不足分野において、外国人を原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準へ育成する制度です。
企業には、育成就労計画に沿った技能指導、日本語能力の向上、評価、適正な労務管理などが求められます。
採用時点から一定の技能を求める特定技能1号と、採用後に計画的に育てる育成就労では、企業に必要な受入れ体制が異なります。
技術・人文知識・国際業務
技術・人文知識・国際業務は、大学等で学んだ知識や職務経験を生かす専門的な業務などを対象とする在留資格です。
機械設計、システム開発、経理、企画、通訳、海外取引などが該当する可能性がありますが、学歴・職歴と担当業務の関連性などが審査されます。
製造会社で採用した場合でも、製造ラインの単純作業を主な業務として担当させるための資格ではありません。
身分に基づく在留資格
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など、身分や地位に基づく在留資格では、就労活動に幅広く従事できます。
ただし、在留資格の種類や在留期限を確認し、外国人雇用状況の届出など、企業に必要な手続を行わなければなりません。
外国人雇用を始める前に企業が整えるべきこと

外国人雇用は、採用した後から支援方法を考えると、現場の混乱につながります。担当業務、教育、相談対応、住居、費用を採用前に整理する必要があります。
特定技能や育成就労など、制度によって求められる支援や監理も異なるため、在留資格に合った準備を進めましょう。
採用目的と必要な人材像を明確にする
まず、なぜ人材が必要なのかを整理します。
欠員の補充なのか、事業拡大なのか、技能承継なのかによって、必要な人材は異なります。担当業務、必要な技能、日本語能力、採用時期、人数、雇用期間、将来任せたい役割を具体化しましょう。
「人が足りないから外国人を採用する」という状態では、候補者選びや配属が曖昧になります。
在留資格と業務内容を一致させる
採用前に、外国人へ担当させる予定の業務が、在留資格で認められる範囲に入っているかを確認します。
雇用後に対象外の業務を主に担当させると、本人だけでなく企業側にも問題が生じる可能性があります。
判断が難しい場合は、出入国在留管理庁の資料を確認し、行政書士などの専門家へ相談しましょう。
日本人社員へ受入れの目的を説明する
外国人採用について現場へ説明しないまま配属すると、「なぜ自分たちが教えなければならないのか」「仕事を奪われるのではないか」といった不安が生じる場合があります。
外国人を採用する背景、担当業務、教育体制、将来の人員計画を日本人社員にも説明しましょう。
外国人本人だけに適応を求めず、日本人社員へも、やさしい日本語、文化の違い、ハラスメント防止などの研修を行うことが有効です。
採用コストだけでなく定着コストも見積もる
外国人雇用では、紹介料や在留手続費だけでなく、住居、渡航、日本語教育、生活支援、通訳、社内担当者の人件費などが発生する場合があります。
初年度の費用だけで判断せず、在留期間全体で必要となる費用を試算しましょう。
また、短期間で退職した場合や一時帰国が必要になった場合など、予定外の事態も想定しておく必要があります。
日本人採用と外国人採用を組み合わせる方法
人材戦略では、日本人か外国人かの二者択一で考える必要はありません。国内採用、外国人採用、シニア活用、業務改善を組み合わせることで、特定の採用経路に依存するリスクを減らせます。
重要なのは、国籍別に役割を固定することではなく、それぞれの人材の技能や経験を生かせる配置を考えることです。
現在必要な人材と将来育てる人材を分ける
一定の技能を持つ人材を早期に採用したい場合は、特定技能1号などが候補となります。
一方、原則3年間をかけて特定技能1号水準へ育てたい場合は、育成就労の活用を検討できます。
国内の新卒・中途採用と組み合わせ、採用時期や技能水準の異なる人材を確保することで、人員計画を複線化できます。
外国人材を採用して終わりにしない
採用後は、仕事内容、労働条件、日本語、生活、評価、キャリアについて定期的に確認します。
外国人材が早期退職すれば、人材不足は解消しません。本人から働き続けたいと思われる職場をつくることが必要です。
外国人にとって働きやすい職場へ改善する過程で、業務指示や評価制度が明確になれば、日本人社員の定着にも良い影響が期待できます。
日本人採用だけに頼るリスクを確認するチェックリスト
- 過去3年間で応募者数が減っている
- 求人を出しても採用予定人数に達しない
- 採用単価が上昇している
- 社員の平均年齢が上がっている
- 数年以内に熟練社員の退職が予定されている
- 欠員を残業や休日出勤で補っている
- 人手不足を理由に受注や営業時間を制限している
- 特定の社員しかできない業務が多い
- 採用条件を長期間見直していない
- 外国人雇用に適した業務があるか確認していない
- 特定技能や育成就労の対象分野を確認していない
- 省人化や業務改善と採用計画を別々に考えている
複数の項目に当てはまる場合は、日本人採用をやめるのではなく、採用対象と人員計画を広げる必要があります。
まとめ
日本の生産年齢人口はすでに減少しており、今後も働く世代の縮小が見込まれています。日本人採用だけで必要な人数を確保できる企業もありますが、過去と同じ条件や採用方法を続けるだけでは、欠員を埋められない企業が増える可能性があります。
外国人雇用は、日本人を置き換えたり、安価な労働力を確保したりするための手段ではありません。国内人材の活用、待遇改善、省人化などに取り組んだうえで、それでも不足する人材を確保し、事業を継続するための選択肢として検討することが重要です。
企業は、日本人か外国人かという二者択一ではなく、必要な業務、技能、採用時期、育成体制を基に人材戦略を設計する必要があります。将来の人員不足が深刻になってから動くのではなく、現在の採用実績と人口動向を確認し、複数の採用経路を準備しておくことが安定した事業運営につながります。



