日本では、生産年齢人口の減少などを背景に、製造、建設、介護、農業、宿泊・飲食サービスをはじめとする幅広い産業で、人材確保が重要な経営課題となっています。
国内での採用や生産性向上に取り組んでも、必要な人員を確保できず、事業の維持や拡大に影響が出ている企業もあるでしょう。こうした人手不足分野における新しい外国人受入れ制度として、2027年4月1日から始まるのが育成就労制度です。
育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、外国人を原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材へ育成するとともに、人材を確保することを目的としています。
一方で、外国人を採用すれば自動的に人手不足が解消する制度ではありません。受入れ企業には計画的な育成、適正な労務管理、日本語能力の向上に向けた取組、相談しやすい環境づくりなどが求められます。
この記事では、育成就労制度の基本的な仕組み、人材確保の面で期待できるメリット、導入前に把握すべきリスク、制度に向いている企業の特徴、特定技能制度との使い分けについて解説します。
※本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいています。育成就労制度の関係法令、運用要領、分野別運用方針、分野ごとの上乗せ基準などは更新される可能性があるため、実際の受入れや申請に際しては、出入国在留管理庁および各分野を所管する省庁の最新情報をご確認ください。
育成就労制度とは何か

育成就労制度は、外国人を労働者として受け入れ、原則3年間の就労を通じて技能と日本語能力を高め、特定技能1号への移行につなげる制度です。
2024年6月21日に改正法が公布され、その後、基本方針、分野別運用方針、関係省令、告示、育成就労制度運用要領などが順次整備されました。2026年1月23日には分野別運用方針が決定され、制度施行に向けた具体的なルールも公表されています。
したがって、育成就労制度は「まだ制度の骨格を検討している段階」ではありません。施行前ではあるものの、企業が自社の対象可否や受入れ体制を具体的に検討できる段階に入っています。
制度創設の背景と目的
技能実習制度は、開発途上地域等への技能移転による国際貢献を目的として運用されてきました。
しかし、実際には国内企業の人材確保として利用されている面があり、制度目的と実態の乖離、本人意向による転籍の制限、不適正な送出しや受入れ、監理団体による監理の質のばらつきなどが課題として指摘されました。
こうした状況を踏まえ、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を正面から目的に掲げる制度として育成就労制度が創設されました。
育成就労制度では、外国人を単なる一時的な労働力として受け入れるのではなく、計画的に技能を身に付けてもらい、特定技能1号として引き続き働ける人材へ育てることが想定されています。
在留期間は原則3年
育成就労の期間は原則3年です。
この期間に、特定技能1号への移行に必要な技能と日本語能力を身に付けることを目指します。一定の事情がある場合には延長が認められる仕組みもありますが、基本的な制度設計は3年間の育成です。
ただし、3年間同じ会社で働き続けることが保証されるわけではありません。やむを得ない事情がある場合に加え、一定の要件を満たした場合には、本人意向による転籍も認められます。
企業は「3年間の雇用が確約される制度」ではなく、「3年間を基本として人材を育成する制度」と理解する必要があります。
育成就労の対象分野
育成就労制度は、すべての業種で利用できる制度ではありません。
対象となるのは、生産性向上や国内人材の確保に取り組んでも、なお人材を確保することが難しいと認められる産業分野です。対象分野や業務区分は、特定技能制度との連続性も考慮して設定されています。
また、同じ分野であっても、すべての業務が対象になるとは限りません。受入れ企業は、自社の業種だけでなく、外国人が実際に担当する業務が対象区分に該当するかを確認する必要があります。
分野によっては、受入れ人数、転籍までの就労期間、日本語能力、企業の体制などについて、独自の上乗せ基準が設けられています。
入国時の日本語能力
育成就労外国人には、入国時または就労開始時に一定の日本語能力が求められます。
ただし、すべての分野・受入れ方法について「日本語能力試験N5以上であれば入国できる」と一律に説明するのは正確ではありません。日本語能力の確認方法には、試験合格や認定日本語教育機関等による講習などがあり、分野別の上乗せ要件が設けられる場合もあります。
企業は候補者が試験基準を満たしているかだけでなく、担当業務に必要な指示、安全ルール、生活上の説明を理解できるかも確認する必要があります。
特定技能1号への移行を目指す制度
育成就労制度は、特定技能1号への移行を基本的なキャリアルートとして設計されています。
原則3年間の育成就労を終え、必要な技能試験と日本語試験に合格するなどの要件を満たした場合、特定技能1号への在留資格変更を申請できます。
ただし、育成就労を修了すれば自動的に特定技能1号へ移行できるわけではありません。
本人が必要な技能や日本語能力を身に付けられなかった場合や、受入れ企業側の育成体制に問題があった場合には、予定どおり移行できない可能性があります。
企業は採用時点から、3年間の育成計画と特定技能1号への移行支援を一体で考えることが重要です。
育成就労制度で人材確保は進むのか
育成就労制度によって、対象分野における外国人材の採用経路が広がることは期待できます。
一方で、制度が始まれば人手不足が一斉に解消するとは限りません。候補者の確保、送出国との関係、監理支援機関の体制、企業側の育成力、外国人本人から選ばれる労働条件など、複数の要素が受入れ数や定着に影響します。
採用対象となる人材の幅は広がる
特定技能1号は、一定の技能と日本語能力を既に備えた人材を受け入れる制度です。
これに対して育成就労では、入国時点では特定技能1号の水準に達していない人材を、就労を通じて育成できます。
企業にとっては、完成された即戦力人材だけを探すのではなく、適性や成長意欲を持つ人材を採用し、自社で育てる選択肢が増えることになります。
採用後の定着は企業の取組に左右される
育成就労制度では、一定の条件を満たした本人意向による転籍が認められます。
そのため、外国人を採用できたとしても、賃金、労働時間、職場の人間関係、教育、生活環境などに問題があれば、別の企業への転籍を希望される可能性があります。
制度の存在だけで定着が進むのではなく、外国人本人から働き続けたいと思われる職場をつくれるかが重要です。
特定技能への移行後も自社に残るとは限らない
育成就労を経て特定技能1号へ移行した外国人は、在留資格上の条件を満たす範囲で転職できます。
企業が3年間育成した人材であっても、特定技能移行後に他社を選ぶ可能性はあります。
したがって、育成費用を負担したことを理由に転職を制限するのではなく、能力に応じた賃金、昇進機会、評価制度、働きやすい環境を整える必要があります。
育成就労制度を活用するメリット

育成就労制度を適正に運用できれば、企業にとって中長期的な人材戦略の選択肢になります。
中長期的に人材を育成できる
育成就労制度では、企業が育成就労計画に基づき、外国人の技能と日本語能力を計画的に高めます。
採用後に現場へ配置するだけではなく、3年間でどの業務を習得してもらうのか、誰が指導するのか、どのように習熟度を確認するのかをあらかじめ整理する必要があります。
これにより、外国人本人の成長だけでなく、企業の教育体制そのものを見直すきっかけになります。
特定技能1号への移行を見据えられる
育成就労から特定技能1号への移行が実現すれば、企業は自社の業務や安全ルール、職場文化を理解した人材を引き続き雇用できる可能性があります。
新たな人材を一から採用・教育する場合と比べ、業務理解が進んだ人材に継続して働いてもらえることは、企業にとって利点になり得ます。
ただし、試験合格や本人の希望、在留資格変更の許可などが必要であり、継続雇用が保証されるわけではありません。
採用チャネルを増やせる
企業は、国内採用、特定技能、専門的・技術的分野の在留資格などに加え、育成就労という選択肢を持てるようになります。
すぐに働ける特定技能人材を採用する枠と、将来の特定技能人材を育てる育成就労の枠を分けるなど、複数の制度を組み合わせた人員計画も検討できます。
一つの採用経路だけに依存しないことは、人材確保のリスクを分散するうえでも有効です。
社内の教育方法を標準化できる
外国人へ分かりやすく業務を教えるには、担当者の経験や感覚だけに頼らず、作業手順を整理する必要があります。
写真、図、動画、やさしい日本語、多言語資料などを活用し、業務の手順や安全ルールを見える化すれば、外国人だけでなく、日本人の新人教育にも活用できます。
育成就労の準備を通じて、社内の教育内容や評価基準を標準化できる可能性があります。
適正な外国人雇用が採用力につながる可能性がある
賃金や労働時間を適正に管理し、技能や日本語の学習機会を用意し、相談に対応できる企業は、外国人本人や採用関係者から信頼されやすくなります。
ただし、制度を利用しているだけで企業イメージが向上するわけではありません。
雇用条件と実態が一致していること、問題が起きた際に適切に対応すること、外国人を対等な従業員として扱うことが前提です。
育成就労制度のリスクと課題
育成就労制度には人材確保の可能性がある一方、企業側の負担や不確実性もあります。
制度開始直後は運用上の調整が生じる可能性がある
法令や運用要領はすでに公表されていますが、育成就労制度は2027年4月1日に始まる新制度です。
施行後は、申請手続、監理支援機関の業務、外国人育成就労機構による認定や監督などについて、実務上の運用が蓄積されていきます。
制度開始直後には、申請書類の準備、関係機関との調整、企業側の社内手続などに、想定以上の時間がかかる可能性があります。
ただし、制度が不確定だから何も準備できない段階ではありません。現在公表されている分野別運用方針や運用要領を基に、対象業務や社内体制を確認することが重要です。
教育・管理コストが発生する
育成就労外国人を受け入れる際には、賃金だけでなく、採用、渡航、住居、教育、相談対応、監理支援機関への支払いなど、さまざまな費用が発生します。
さらに、社内で技能指導や労務管理を行う担当者の人件費も必要です。
全国一律の公定費用があるわけではないため、候補者の送出国、分野、地域、監理支援機関、住居などによって総額は変わります。
企業は初期費用だけでなく、3年間の継続費用を見積もる必要があります。
育成担当者の負担が増える
外国人本人の努力だけで、技能や日本語能力が自然に向上するわけではありません。
現場では、作業内容の説明、理解度の確認、技能評価、安全教育、試験準備などが必要です。
指導を一人の社員へ集中させると、担当者が通常業務との両立に苦しむ可能性があります。
技能指導、人事・労務管理、生活相談などの役割を分担し、組織全体で支える体制を整えましょう。
日本語学習を本人任せにできない
育成就労から特定技能1号へ移行するには、原則として必要な日本語試験に合格する必要があります。
残業が多く学習時間を確保できない、業務で日本語を使う機会が少ない、適切な教材がないといった状態では、能力向上が進まない可能性があります。
日本語学習を本人だけの責任と考えず、学習時間への配慮、教材や受講機会の提供、職場での実践機会などを検討する必要があります。
全員が特定技能1号へ移行できるとは限らない
育成就労制度は、特定技能1号への移行を目指す制度ですが、全員の移行を保証するものではありません。
技能試験や日本語試験に合格できない場合、本人が帰国を希望する場合、健康や家庭の事情が生じる場合など、予定どおり移行できない可能性があります。
企業は「採用した全員が8年間働く」などの前提で人員計画を立てないよう注意が必要です。
転籍により人材が流出する可能性がある
育成就労制度では、一定の条件を満たした本人意向による転籍が認められます。
企業が採用費や教育費を負担していても、外国人の転籍を不当に妨げることはできません。
転籍を避けるには、違約金などで縛るのではなく、適正な待遇、技能に応じた評価、相談しやすい環境、将来のキャリアを示すことが重要です。
監理支援機関へ任せきりにできない
監理支援機関は、育成就労計画の作成支援、企業への監査・指導、外国人からの相談対応、転籍支援などを担います。
しかし、外国人と雇用契約を締結するのは受入れ企業です。
賃金の支払い、勤怠管理、安全衛生、ハラスメント防止、日常的な技能指導などの責任を、監理支援機関へ全面的に移すことはできません。
育成就労制度が向いている企業
育成就労制度は、対象分野に該当するすべての企業に等しく適した制度ではありません。
3年以上の人材育成計画を描ける企業
育成就労は、短期間で即戦力を補充する制度ではありません。
3年間で必要な技能を段階的に身に付けてもらい、その後の特定技能1号への移行まで想定できる企業に向いています。
次のような内容を具体化できる企業は、制度を活用しやすいでしょう。
- 1年目に習得する基礎業務
- 2年目に担当する応用業務
- 3年目に目指す技能水準
- 技能を評価する方法
- 日本語学習の支援方法
- 特定技能試験の受験時期
- 特定技能移行後の業務と待遇
現場に指導余力がある企業
制度上の計画が整っていても、実際に指導できる社員がいなければ育成は進みません。
現場の人員が極端に不足しており、新人へ仕事を教える時間を確保できない企業では、育成就労の導入によって既存社員の負担がさらに増える可能性があります。
指導担当者を確保し、教育時間を業務計画に組み込めるかを確認しましょう。
外国人を公平に評価できる企業
技能が向上しても賃金や役割が変わらなければ、本人の意欲が低下し、転籍につながる可能性があります。
日本人社員と外国人社員の双方に適用できる、明確な技能評価や昇給基準を持つ企業は、育成人材の定着を図りやすくなります。
評価基準がない場合は、制度導入前に作業レベル、指導能力、資格、担当範囲などを整理しましょう。
相談体制を整えられる企業
外国人が抱える問題は、仕事だけではありません。
住居、交通、医療、行政手続、職場の人間関係、日本語学習など、生活面の問題が就労に影響する場合があります。
企業内に相談担当者を設けるほか、監理支援機関、自治体、外国人相談窓口などと連携できる企業は、問題を早期に把握しやすくなります。
外部の専門機関と適切に連携できる企業
育成就労制度では、監理支援機関が重要な役割を担います。
必要に応じて、行政書士、社会保険労務士、日本語教育機関、自治体の相談窓口などと連携することも考えられます。
ただし、外部へ依頼すれば企業側の責任がなくなるわけではありません。
外部機関の業務内容、費用、連絡体制、問題発生時の対応を確認し、企業自身が状況を把握できる体制を維持する必要があります。
育成就労制度が向いていない可能性がある企業
次のような企業は、制度導入前に体制を見直す必要があります。
今すぐ即戦力だけが必要な企業
育成就労外国人は、就労しながら特定技能1号水準を目指す人材です。
採用直後から一人で高度な作業を任せたい場合や、教育する時間がない場合は、既に必要な技能を持つ特定技能1号人材などの採用が適している可能性があります。
教育を現場任せにする企業
「仕事は見て覚えるもの」「分からなければ本人から聞けばよい」という運用では、計画的な育成は難しくなります。
指導担当者や評価方法を決められない企業は、育成就労制度の趣旨に沿った受入れ体制を構築できない可能性があります。
安価な労働力を期待する企業
育成就労外国人にも、労働関係法令が適用されます。
外国人であることや育成期間中であることを理由に、不当に低い賃金を設定することは認められません。
採用・監理・教育・住居などの費用も発生するため、日本人よりも必ず低コストで雇用できる制度ではありません。
転籍を認めたくない企業
育成した人材に自社で長く働いてもらいたいと考えること自体は自然です。
しかし、本人意向による転籍制度を否定し、パスポートや在留カードを預かる、違約金を設ける、退職を妨げるといった対応は認められません。
適正な転籍制度を前提として、選ばれる職場づくりを進められない企業には向いていません。
育成就労制度と特定技能制度の違い
育成就労と特定技能1号は、どちらも人手不足分野の外国人雇用に関係しますが、制度の役割が異なります。
| 比較項目 | 育成就労 | 特定技能1号 |
| 主な目的 | 人材育成と人材確保 | 人材確保 |
| 技能水準 | 就労を通じて1号水準を目指す | 就労開始時から一定の技能が必要 |
| 基本期間 | 原則3年 | 原則として通算5年まで |
| 日本語・技能 | 段階的に向上させる | 原則として試験などで事前確認 |
| 育成計画 | 育成就労計画が必要 | 育成就労計画は不要 |
| 支援・監理 | 監理支援機関による監理・支援 | 1号支援計画による支援 |
| 本人意向による移動 | 一定の要件で転籍可能 | 要件の範囲で転職可能 |
| 向いている採用 | 将来の人材を育てたい場合 | 一定の技能を持つ人材を採用したい場合 |
育成就労制度は、特定技能制度の代替ではなく、特定技能1号人材を育成する前段階として連続性を持つ制度です。
即戦力を求めるなら特定技能1号
現場ですぐに一定水準の業務を担当できる人材が必要な場合は、特定技能1号の採用が適している可能性があります。
特定技能1号では、原則として技能試験と日本語試験などにより、就労開始前に能力が確認されています。
ただし、技能試験に合格しているからといって、自社の具体的な作業を直ちに一人で担当できるとは限りません。入社後の教育や職場への適応支援は必要です。
将来の人材を自社で育てるなら育成就労
採用時点で完成された技能を求めるのではなく、3年間をかけて自社の業務を教え、特定技能1号への移行を目指す場合は、育成就労が候補になります。
ただし、育成に必要な費用と人員を確保できることが前提です。
両制度を組み合わせる方法もある
企業によっては、特定技能1号と育成就労を併用する方法も考えられます。
たとえば、経験のある特定技能外国人に一定の役割を担ってもらいながら、新たな育成就労外国人を計画的に育てる仕組みです。
ただし、特定技能1号外国人を育成就労外国人の法定指導者として配置できるかどうかは、本人の在留資格、業務内容、経験、分野別要件などを確認する必要があります。
人材確保につなげるための準備
育成就労制度を人材確保へつなげるには、採用数だけでなく、育成と定着を含めた設計が必要です。
自社が対象分野か確認する
最初に、自社の業種と外国人が担当する予定の業務が、育成就労の対象に含まれているか確認します。
業種名だけで判断せず、業務区分や分野別の上乗せ基準も確認しましょう。
3年間の育成計画を考える
育成就労計画の申請書を作る前に、現場で実行できる育成内容を整理します。
- いつまでに何を覚えてもらうか
- 誰が指導するか
- どのように技能を評価するか
- 日本語をどのように学ぶか
- 試験へどのように備えるか
- 遅れが生じた場合にどう対応するか
現場の意見を反映し、実行可能な計画にすることが重要です。
費用を項目別に見積もる
育成就労に必要な費用は、次のように分けて確認します。
- 募集・採用費
- 渡航・入国手続費
- 監理支援機関への費用
- 住居や生活用品の費用
- 日本語教育費
- 技能教育費
- 試験受験費
- 通訳・翻訳費
- 社内担当者の人件費
- 転籍や帰国時に生じる可能性のある費用
見積りでは、初年度だけでなく、3年間の総額を確認しましょう。
雇用条件を明確にする
賃金、手当、労働時間、休日、業務内容、控除、住居費などを明確にします。
外国人本人が十分に理解できる言語や方法で説明し、採用時の説明と実際の条件を一致させなければなりません。
不明確な控除や、本人が理解していない費用負担は、トラブルや転籍の原因になります。
特定技能移行後のキャリアを示す
育成就労期間中だけでなく、特定技能1号へ移行した後の役割や待遇も検討しましょう。
- どの業務を担当できるか
- 技能に応じて昇給するか
- 後輩指導を任せるか
- 取得を支援する資格はあるか
- 特定技能2号を目指せる分野か
- 何年後にどの役割を期待するか
実現できない昇進や永住許可を約束するのではなく、会社として提供できる現実的なキャリアを示す必要があります。
制度施行までに企業が確認すべきチェックリスト
育成就労の利用を検討する企業は、次の項目を確認しましょう。
- 2027年4月1日の施行日を把握しているか
- 自社の業務が対象分野・業務区分に含まれるか
- 分野別運用方針を確認したか
- 分野独自の上乗せ基準を確認したか
- 3年間の育成方針を作成できるか
- 技能指導を担当する社員がいるか
- 指導担当者の業務時間を確保できるか
- 日本語学習を支援できるか
- 雇用条件を本人へ明確に説明できるか
- 適正な賃金・労働時間管理ができているか
- 相談担当者を設けられるか
- 監理支援機関の候補を比較したか
- 監理支援機関へ任せる業務を整理したか
- 初期費用と3年間の継続費用を試算したか
- 転籍が起きた場合の対応を検討したか
- 特定技能1号への移行支援を検討したか
- 移行後の役割と待遇を考えているか
- 既存の技能実習生に関する経過措置を確認したか
技能実習から育成就労への切替えでは、現在の技能実習生が2027年4月1日に一律で育成就労へ変更されるわけではありません。施行日前に認定された技能実習計画については、一定の経過措置が設けられています。
育成就労制度を使うべきか
育成就労制度を利用すべきかどうかは、「人が足りない」という理由だけでは判断できません。
育成を前提にできるなら有力な選択肢
育成に必要な時間、費用、人員を確保でき、特定技能1号への移行まで見据えた人材計画を立てられる企業にとって、育成就労は有力な選択肢です。
採用時点の技能だけで判断せず、成長可能性のある人材を自社で育てられる点は、特定技能1号の直接採用とは異なる特徴です。
即戦力だけが必要なら慎重に判断する
採用直後から高い生産性を求める企業や、現場に教育の余裕がない企業は、育成就労よりも特定技能1号などの制度が合っている可能性があります。
ただし、特定技能1号人材であっても、自社独自の業務や安全ルールに関する教育は必要です。
制度開始を待つだけでは準備が間に合わない
育成就労制度は2027年4月1日に施行されます。
2026年8月時点では、基本方針、分野別運用方針、運用要領、関係省令や告示などが公表されています。
制度開始後の他社事例が出るまで何もせず待つのではなく、自社の対象可否、指導体制、費用、監理支援機関の候補など、現在確認できる項目から準備することが重要です。
一方で、制度開始前に確定していない採用人数や費用を前提として、大規模な事業計画を固定することも避けるべきです。
最新情報を確認しながら、段階的に準備を進めるのが現実的です。
まとめ
育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的として2027年4月1日から始まる新たな外国人雇用制度です。原則3年間の育成を通じて特定技能1号への移行を目指す仕組みですが、制度を導入するだけで人材不足や定着の課題が解決するわけではありません。
企業には、育成計画の実行、日本語教育や技能指導、適正な労務管理、相談体制の整備、監理支援機関との連携など、多面的な対応が求められます。また、採用・教育・生活支援にかかるコストや、本人意向による転籍、特定技能1号へ移行できない可能性なども踏まえ、制度の特性を理解したうえで運用することが重要です。
制度を有効に活用するには、自社の育成力や受入れ体制を客観的に見極め、特定技能1号など既存制度との違いも踏まえて最適な採用戦略を構築することが欠かせません。自社の目的や人材ニーズに応じて制度を適切に使い分けることが、中長期的な人材確保と定着につながるでしょう。




