外国人材を採用したものの、「想定より早く退職した」「教育に時間と費用をかけたのに定着しなかった」と悩む企業は少なくありません。外国人雇用が広がるなか、採用人数だけでなく、入社後に安心して働き続けられる環境を整えることが重要です。
外国人材の早期退職は、国籍や本人の性格だけで説明できません。採用前の説明と実際の業務の違い、日本語によるコミュニケーション、評価への納得感、生活上の不安、家族との関係など、複数の要因が重なって生じます。
この記事では、外国人材が早期退職を考える主な理由と、企業が就労者に向き合い、定着につなげる方法を解説します。特定技能制度や育成就労制度を利用する企業が押さえたい実務上のポイントも確認しましょう。
※本記事の内容は作成あるいは更新時点の情報に基づいています。関係法令や制度運用は変更される可能性があるため、実際の対応では出入国在留管理庁や厚生労働省などの最新情報をご確認ください。
外国人材の早期退職を企業はどう捉えるべきか

外国人材の早期退職を防ぐには、退職を本人だけの問題として処理しないことが出発点です。企業側の採用方法、受入れ体制、指導、評価、生活面への配慮を振り返り、改善できる要因を見つける必要があります。
採用できても定着しなければ人手不足は解消しない
外国人材の採用には、求人、面接、在留手続、渡航、住居、入社教育など、多くの費用と工数がかかります。入社後も、現場社員による業務説明、安全教育、日本語でのフォローが必要です。
短期間で退職が繰り返されると、企業は採用と教育を何度もやり直すことになります。現場に「教えてもまた辞めるのではないか」という疲労感が生まれれば、新たな人材を受け入れる力まで低下しかねません。
厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は約257万人、外国人を雇用する事業所数は約37万か所で、いずれも過去最多です。外国人雇用が一般化するほど、採用後の雇用管理と定着支援も重要になります。
「外国人だから辞めた」では改善できない
早期退職が起きた際、「外国人は定着しにくい」と一括りにすると、企業側にある原因を見落とします。同じ国籍や在留資格でも、来日の目的、家族構成、日本語能力、将来希望は一人ひとり異なります。
退職理由を把握するには、採用時の説明、配属後の業務、労働条件、人間関係、評価、生活状況を個別に確認することが必要です。企業で改善できる部分を見つけなければ、次の採用でも同じ問題が起こります。
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外国人材が早期退職を考える主な理由

早期退職には一つの原因だけがあるとは限りません。仕事上の不満に生活上の問題や将来への不安が加わり、退職意思につながることがあります。ここでは代表的な要因を整理します。
採用時の説明と実際の仕事が違う
採用時に聞いた仕事と入社後の業務が異なれば、国籍を問わず不信感が生まれます。担当業務だけでなく、勤務場所、交替勤務、残業、休日、給与から控除される寮費や光熱費も、本人が理解できる方法で説明することが重要です。
厚生労働省の外国人雇用管理指針でも、募集時に業務内容、賃金、労働時間、就業場所、契約期間などを明示し、国外居住者には渡航費や住居などの条件も明確にするよう求めています。説明を紹介会社だけに任せず、企業自身が確認しましょう。
職場の日本語や指示を理解できない
日本語試験で一定水準を満たしていても、現場特有の略語、方言、専門用語、遠回しな表現まで理解できるとは限りません。「適当に」「前と同じように」といった曖昧な指示は、新入社員にも伝わりにくい表現です。
2024年外国人雇用実態調査では、企業が感じる課題として「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」が43.9%で最多でした。問題を本人の日本語能力だけに帰さず、企業側も短い文、具体的な指示、写真、図、実演を使う必要があります。
評価と将来のキャリアが見えない
仕事を覚えて担当できる工程が増えても、給与や役割が変わらなければ、「努力しても評価されない」と感じる可能性があります。日本人社員には暗黙に共有されている評価基準が、外国人社員には伝わっていない場合もあります。
評価項目は、「真面目さ」などの抽象語だけでなく、担当可能な作業、品質、安全、報告、後輩への説明など、行動で確認できる形にしましょう。特定技能への移行、資格取得、担当範囲の拡大など、実現可能なキャリアも共有することが大切です。
厚生労働省の指針でも、外国人労働者が職場での評価や処遇に納得して働けるよう、求める能力の明確化や、人事評価・賃金決定・配置に関する運用の透明化に努めることが示されています。
生活上の問題を相談できない
外国人材は、仕事と同時に日本での生活にも適応しなければなりません。住居、通勤、行政手続、医療、税金、社会保険、家族への送金などの問題が、仕事への集中や継続意思に影響することがあります。
2024年外国人雇用実態調査では、就労上のトラブルがあった人のうち、「困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」が14.9%でした。また、外国人労働者の54.8%が母国の家族などへ仕送りをしており、給与や控除、休暇は本人だけでなく家族の生活にも関係します。
指導方法や人間関係に負担を感じる
大声で注意する、皆の前で叱る、理由を説明せず命令するといった指導は、本人に強い心理的負担を与えます。指導する側に差別の意図がなくても、言葉や態度が威圧的に受け取られる可能性があります。
文化の違いをすべて外国人側に合わせる必要はありませんが、業務上必要な注意と人格を否定する言動は分けなければなりません。ハラスメント防止のルールは、国籍を問わず同じように適用することが基本です。
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早期退職を防ぐための就労者との向き合い方

定着支援は、特別な交流イベントを増やすことではありません。採用前の説明、日々の指導、評価、相談対応など、通常の雇用管理を分かりやすく公平に運用することが中心です。
不都合な条件も採用前に説明する
採用を成功させたいあまり、仕事の良い面だけを強調すると、入社後のギャップが大きくなります。夜勤、繁忙期の残業、立ち仕事、暑さや寒さ、寮の立地など、本人の判断に必要な情報は事前に伝えましょう。
説明後は「分かりましたか」と尋ねるだけでなく、本人の言葉で仕事内容や条件を説明してもらいます。理解のずれを入社前に見つければ、採用後のトラブルを減らせます。
日本語学習と同時に企業側の伝え方も改善する
外国人材に日本語学習を求めることは必要ですが、企業側の説明が分かりにくいままでは十分ではありません。安全や品質に関わる指示は、一文を短くし、作業の順序、期限、禁止事項を具体的に伝えます。
口頭説明だけに頼らず、写真付き手順書、動画、ピクトグラム、多言語資料も活用しましょう。説明後に実作業を行ってもらい、正しく理解できたかを確認することが重要です。
定期面談で小さな問題を早く見つける
退職の兆候が見えてから面談するのでは遅い場合があります。入社直後は短い間隔で面談し、仕事、生活、人間関係、健康、日本語学習について確認しましょう。
面談を「辞めるつもりはないか」と問い詰める場にしてはいけません。本人の話を遮らず、すぐに否定や説教をせず、事実と要望を分けて聞きます。上司へ直接話しにくい問題に備え、別の相談担当者も設けましょう。
評価と処遇を本人に説明する
評価制度があっても、本人が理解していなければ定着支援として機能しません。どの技能が評価され、次に何を習得すれば役割や処遇が変わるのかを定期的に説明します。
外国人社員だけに特別な基準を設けるのではなく、日本人社員との公平性も確保しましょう。同じ業務、技能、責任に対して合理的な理由のない差が生じていないかを確認してください。
支援機関と企業の役割を明確にする
特定技能1号では、受入れ機関が支援計画を作成し、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談対応、定期面談などを実施します。登録支援機関へ委託できますが、日々の業務指示や労務管理を担うのは企業です。
職場の人間関係は企業、在留手続は担当部署、生活相談は支援機関など、窓口を明確にしましょう。「支援機関へ任せているから問題ない」という状態では、相談の放置が起こり得ます。
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特定技能・育成就労で定着支援が重要な理由

特定技能や育成就労では、外国人本人が同じ企業で働き続けることが当然に保証されるわけではありません。制度上の移動を不当に妨げるのではなく、適正な雇用管理によって選ばれる職場をつくる必要があります。
特定技能人材は要件を満たせば転職できる
特定技能外国人が別の企業で働く場合は、在留資格変更許可申請などの手続が必要ですが、転職そのものが一律に禁止されているわけではありません。
企業ができるのは、違約金や書類の取上げで移動を防ぐことではありません。労働条件、評価、指導、相談体制を改善し、本人が自社で働く合理的な理由をつくることです。
育成就労では本人意向の転籍も認められる
2027年4月1日に始まる育成就労制度では、やむを得ない事情による転籍に加え、一定の技能、日本語能力、就労期間などの要件を満たした本人意向の転籍も認められます。転籍は同一業務区分内に限られ、分野ごとの条件に従います。
育成費用を理由に本人を拘束するのではなく、技能向上に応じた役割と処遇を用意し、特定技能1号への移行後も働きたいと思われる環境を整える必要があります。
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早期退職を減らすための実務フロー
定着支援を担当者の善意だけに頼ると、繁忙期や人事異動で対応が止まります。採用前から入社後までの確認事項を標準化し、社内の仕組みとして運用しましょう。
入社前から90日間を重点的に支援する
入社前には、仕事内容、労働時間、休日、給与、控除、住居、通勤方法、在留資格上の業務範囲を説明します。紹介会社から得た情報だけで判断せず、企業と本人が直接話す機会を設けましょう。
入社後は、初日、1週間後、1か月後、3か月後など、節目を決めて状況を確認します。業務理解、安全、体調、残業、給与明細、住居、人間関係、日本語学習、相談先の理解を確認し、問題には担当者と期限を決めて対応します。
退職理由を記録し、採用と教育へ反映する
退職者が出た場合は、可能な範囲で理由を聞き取り、採用条件、配属、指導、評価、生活支援のどこに問題があったかを整理します。「自己都合」の一言で終わらせないことが重要です。
個人を責めるためではなく、再発防止のために記録します。同じ理由が続く場合は、採用担当者だけでなく、経営者や現場責任者も参加して改善策を検討しましょう。
退職の意思を示されたときの対応
本人が退職を申し出たときは、強く引き止める前に理由を確認します。賃金未払い、ハラスメント、契約と異なる業務など、企業が直ちに是正すべき問題が含まれている可能性があります。
退職の意思が固い場合は、不当に妨げず、雇用契約、就業規則、労働関係法令に沿って手続を進めます。在留資格や転職手続の説明が必要な場合は、登録支援機関や行政の相談窓口とも連携しましょう。
企業向け早期退職防止チェックリスト
- 採用時の説明と実際の業務が一致している
- 給与、控除、残業、休日、住居費を説明している
- 現場で必要な日本語と安全用語を整理している
- 写真、図、動画を使った手順書がある
- 指導担当者と相談担当者を決めている
- 入社後の面談時期と確認項目を定めている
- 技能評価と昇給・役割の基準を説明している
- 支援機関との役割分担が明確である
- ハラスメント発生時の対応方法を定めている
- 退職理由を採用・教育へ反映している
- 在留資格の範囲内で適正な業務に配置している
まとめ
外国人材の早期退職は、本人の国籍や性格だけで起こるものではありません。採用時の説明と実際の業務の違い、伝わりにくい指示、評価への不満、将来のキャリアが見えないこと、生活上の問題を相談できないことなど、複数の要因が関係します。
企業が取り組むべきなのは、退職を強制的に防ぐことではなく、正確な条件説明、分かりやすい指導、公平な評価、定期面談、相談体制を整えることです。外国人材だけに適応を求めず、企業側も雇用管理を見直すことで、日本人を含む従業員全体が働きやすい職場につながります。
特定技能や育成就労を中長期的な人材戦略として活用するなら、採用人数だけでなく、育成、評価、キャリア、定着までを一体で設計する必要があります。一人ひとりの目的や状況を理解し、本人から働き続けたいと選ばれる職場をつくることが、早期退職を減らす最も現実的な方法です。




