人手不足が続くなか、外国人材の受入れを採用戦略に組み込む企業が増えています。
そのなかで、技能実習制度に代わる新たな仕組みとして2027年4月1日から始まるのが「育成就労制度」です。育成就労制度では、外国人を原則3年間受け入れ、就労を通じて特定技能1号水準の技能を持つ人材へ育成することを目指します。
技能実習制度から育成就労制度への移行によって、制度目的、対象分野、本人意向による転籍、監理体制、特定技能制度との関係などが変わります。そのため、これまで技能実習生を受け入れてきた企業も、新しい制度を前提に採用・育成体制を見直さなければなりません。
2026年8月時点では、基本方針、分野別運用方針、関係省令、告示、育成就労制度運用要領などが公表されています。制度の大枠を検討している段階ではなく、企業が対象業務や受入れ要件を確認し、具体的な準備を進める段階に入っています。
この記事では、育成就労制度の概要、対象となる17分野、在留資格の要件、技能実習との経過措置、特定技能1号への移行、企業が準備すべき実務について解説します。
※本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいています。関係法令、運用要領、分野別運用方針、上乗せ基準、申請様式などは更新される可能性があるため、実際の申請や受入れに際しては、出入国在留管理庁および各分野を所管する省庁の最新情報をご確認ください。
育成就労制度とは何か

育成就労制度は、人手不足分野において、外国人を原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材へ育成し、人材を確保する制度です。
技能実習制度を発展的に解消して創設され、2027年4月1日から運用が始まります。改正法は2024年6月21日に公布され、制度の施行に向けて関係法令や運用ルールが整備されています。
技能実習制度から育成就労制度へ変わる背景
技能実習制度は、開発途上地域等への技能移転による国際貢献を主な目的として運用されてきました。
一方、実際には日本国内の人材確保策として利用されている面があり、制度目的と就労実態の乖離、本人意向による転籍の制限、不適正な送出しや受入れ、監理の質のばらつきなどが課題とされてきました。
育成就労制度では、制度目的を「人材育成」と「人材確保」に改め、外国人を労働者として保護しながら、特定技能1号への移行を見据えて育成します。
名称だけを変更するのではなく、制度目的と実態を一致させ、外国人本人のキャリア形成も考慮した仕組みへ転換する点が重要です。
在留資格「育成就労」の位置付け
育成就労制度の開始に伴い、在留資格「育成就労」が設けられます。
育成就労外国人は、認定された育成就労計画に基づいて対象業務に従事しながら、技能と日本語能力を段階的に高めます。
企業は単に雇用契約を締結して働いてもらうだけでなく、次のような内容を計画的に実施する必要があります。
- 担当業務の設定
- 技能の育成
- 日本語能力の向上
- 習得状況の評価
- 労働条件の適正な管理
- 相談対応
- 特定技能1号への移行準備
育成就労は単独で長期間在留するための資格というより、特定技能1号への移行を基本的なキャリアルートとする制度です。
育成就労の在留期間は原則3年
育成就労の基本的な期間は3年を超えない範囲です。
この期間に、対象分野で求められる技能と日本語能力を身に付け、特定技能1号への移行を目指します。
ただし、一定の事情により特定技能1号への移行に必要な試験へ合格できなかった場合などには、要件を満たす範囲で育成期間の延長が認められる仕組みがあります。
そのため、「どのような場合でも3年で必ず終了する」「3年間働けば自動的に特定技能1号へ移行できる」と理解するのは正確ではありません。
育成就労計画の認定が必要
受入れ企業は、外国人ごとに育成就労計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける必要があります。
計画には、外国人が担当する業務、育成の目標、技能・日本語能力の向上方法、評価方法などを盛り込みます。
外部の専門家や監理支援機関から作成支援を受けることは考えられますが、実際に計画を実施するのは受入れ企業です。
現場の実態と合わない計画を作成すると、書類上は整っていても、日々の業務で実行できない可能性があります。人事部門だけで作成せず、現場責任者や指導担当者も計画作りに参加することが重要です。
育成就労制度の対象は17分野
2026年8月時点では、特定技能制度の対象となる19分野のうち、自動車運送業分野と航空分野を除く17分野が育成就労産業分野として設定されています。
対象となる17分野は、次のとおりです。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 宿泊
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
- 資源循環
- 物流倉庫
- リネンサプライ
従来の解説で「特定技能と同じ16分野が候補」とされていた情報は、現在の制度内容と一致しません。
特定技能制度では、2026年1月に資源循環、物流倉庫、リネンサプライが新たに追加され、対象が19分野となりました。そのうち、育成就労に適した17分野について育成就労産業分野が設定されています。
自動車運送業と航空は育成就労の対象外
自動車運送業と航空は特定技能の対象ですが、2026年8月時点では育成就労産業分野として設定されていません。
したがって、特定技能1号で外国人を受け入れられる分野であっても、必ず育成就労を利用できるとは限りません。
採用担当者は「特定技能の対象か」だけでなく、「育成就労産業分野として設定されているか」を分けて確認する必要があります。
分野名だけでなく業務区分を確認する
企業が対象分野に属していても、外国人に担当させるすべての仕事が育成就労の対象になるわけではありません。
分野ごとに対象となる業務区分や業務内容が定められています。
たとえば、同じ製造会社であっても、外国人が担当する製造工程が工業製品製造業分野の対象業務に該当するかを確認しなければなりません。対象外の事務、営業、配送などを主な業務として担当させることはできません。
採用活動を始める前に、次の事項を確認しましょう。
- 自社の事業が対象分野に該当するか
- 外国人が働く事業所が要件を満たすか
- 主な担当業務が対象業務区分に含まれるか
- 付随的に行わせる業務が認められる範囲か
- 分野独自の上乗せ基準があるか
- 企業単位の受入れ人数基準があるか
分野ごとに受入れ上限がある
育成就労制度では、分野別運用方針において、人材不足の状況に基づく受入れ見込数が設定されます。この受入れ見込数は、分野全体の受入れ上限として運用されます。
そのため、育成就労制度が開始されれば、企業が希望する人数を無制限に採用できるわけではありません。
分野全体の上限に加え、企業または事業所単位の受入れ人数基準が設けられる場合もあります。自社の人員計画は、制度上受け入れられる人数と、実際に育成できる人数の両方を踏まえて作成する必要があります。
分野ごとの対象職種・業務のイメージ

育成就労制度では、一般的な職業名だけではなく、分野別運用方針や運用要領に定められた業務区分に基づいて対象可否が判断されます。
ここでは、採用担当者が制度の全体像を理解するため、対象業務の主なイメージを整理します。
介護分野
介護分野では、身体介護や、これに付随する支援業務などが中心になります。
高齢者や障害者の身体へ直接関わる業務があるため、日本語能力、安全への配慮、利用者とのコミュニケーションが特に重要です。
介護施設に勤務していても、清掃や調理だけを主な業務とする場合などは、介護分野の育成就労として認められるとは限りません。
ビルクリーニング分野
ビルクリーニング分野では、建築物内部の清掃業務が対象になります。
オフィスビル、商業施設、宿泊施設などでの清掃が想定されますが、対象となる事業所や業務内容について分野別要件を確認する必要があります。
ホテルの客室清掃についても、ビルクリーニング分野として扱われる条件と、宿泊分野の業務との関係を確認しましょう。
工業製品製造業分野
工業製品製造業分野では、機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理をはじめ、分野で定められた製造業務が対象になります。
2024年以前に使われていた「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」という名称は、現在の「工業製品製造業」へ再編されています。
ただし、製造会社で行われるすべての工程が対象になるわけではありません。企業の産業分類、事業所、製造品、業務区分を確認する必要があります。
建設分野
建設分野では、土木、建築、ライフライン・設備などの業務区分があります。
現場での建設作業が中心となり、事務、設計のみを担当する職種などは、育成就労の対象業務とは異なります。
建設分野では、出入国在留管理庁への手続に加え、国土交通省が所管する受入れ基準や計画に関する手続も確認しなければなりません。
造船・舶用工業分野
造船・舶用工業分野では、造船、舶用機械、舶用電気電子機器などに関する業務が対象です。
溶接、塗装、鉄工、機械加工などが含まれる場合がありますが、具体的な対象は業務区分によって異なります。
自動車整備分野
自動車整備分野では、自動車の日常点検、定期点検、特定整備などに関する業務が対象です。
自動車販売、洗車、給油などを主な業務として採用する制度ではありません。整備事業者としての要件や、外国人へ担当させる業務内容を確認する必要があります。
宿泊分野
宿泊分野では、フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなど、宿泊施設におけるサービス業務が対象になります。
客室清掃だけを主な業務とする場合は、宿泊分野ではなくビルクリーニング分野との関係を確認しなければならないことがあります。
鉄道分野
鉄道分野では、軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員など、分野別に定められた業務が対象になります。
安全へ直接関係する業務が多いため、技能だけでなく、安全指示を理解できる日本語能力や教育体制が重要です。
農業分野
農業分野では、耕種農業と畜産農業に関する業務が対象です。
栽培管理、農産物の集出荷、家畜の飼養管理、畜産物の集出荷などが想定されます。
農業分野では、一定の条件を満たす場合に派遣形態での受入れも認められます。ただし、一般の企業が自由に外国人を派遣できるわけではありません。
漁業分野
漁業分野では、漁業と養殖業に関する業務が対象になります。
漁具の製作・補修、水産動植物の採捕、漁獲物の処理、養殖水産動植物の育成管理など、業務区分ごとに対象が定められます。
飲食料品製造業分野
飲食料品製造業分野では、酒類を除く飲食料品の製造・加工と、安全衛生に関する業務が対象です。
食品を取り扱うすべての企業が対象になるわけではなく、事業所の産業分類や製造品を確認する必要があります。
外食業分野
外食業分野では、飲食物調理、接客、店舗管理などの業務が対象になります。
皿洗いや清掃などだけを主な業務として採用することは想定されていません。調理・接客を含む外食業全般の業務を段階的に習得させる必要があります。
林業分野
林業分野では、森林における樹木の育成、素材生産などに関する業務が対象になります。
伐木など危険を伴う業務があるため、労働安全衛生法令に基づく教育や資格が別途必要になる場合があります。
木材産業分野
木材産業分野では、製材、合板製造、木材加工など、木材や木製品の製造に関する業務が対象になります。
家具製造など、事業内容によっては対象区分との関係を個別に確認する必要があります。
資源循環分野
資源循環分野は、2026年1月に新たに追加された分野です。
廃棄物の適正処理や再資源化に関する作業などが対象となります。廃棄物を取り扱う業務には、安全衛生や法令遵守が特に求められるため、事業者の許可や作業内容を確認する必要があります。
物流倉庫分野
物流倉庫分野も、2026年1月に追加された分野です。
倉庫における貨物の入出庫、保管、仕分けなどに関する業務が想定されます。
トラック運転を行う自動車運送業とは別の分野です。物流会社であっても、外国人に担当させる主な業務が倉庫業務なのか運送業務なのかを区別する必要があります。
リネンサプライ分野
リネンサプライ分野では、ホテル、病院、介護施設などで使用されるシーツ、タオル、衣類等の回収、洗濯、仕上げ、出荷に関する業務などが対象になります。
一般家庭向けのクリーニング業務と同一ではないため、企業の事業内容がリネンサプライ分野の要件に該当するかを確認しましょう。
在留資格「育成就労」の主な要件
育成就労外国人を受け入れるには、外国人本人だけでなく、受入れ企業、監理支援機関、育成就労計画などが制度上の基準を満たす必要があります。
入国時・就労開始時の日本語要件
育成就労制度では、原則としてA1相当以上の日本語能力が求められます。
A1相当は、日本語能力試験のN5などが目安となる水準です。ただし、試験合格だけでなく、認定日本語教育機関等における講習を受ける方法なども制度上設けられています。
そのため、「N5へ合格していなければ一切入国できない」と一律に説明するのは正確ではありません。
また、分野によっては独自の上乗せ要件が設けられる場合があります。採用予定者については、対象分野の最新要件を確認してください。
日本語の試験基準だけでは判断しない
A1相当の試験へ合格していても、自社の業務指示、安全用語、顧客対応などを十分に理解できるとは限りません。
企業は、制度上の最低基準だけでなく、担当する業務に必要なコミュニケーション能力を確認し、就労開始後も日本語能力を高める必要があります。
特に、危険作業、介護、接客などでは、分からないことを本人から申し出られる環境づくりも重要です。
技能育成の目標
育成就労制度では、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を身に付けることが基本目標です。
企業は、外国人へ同じ単純作業だけを担当させ続けるのではなく、育成就労計画に沿って、段階的に技能を習得できる業務を割り当てる必要があります。
技能の習得状況は、分野別の試験や評価方法に基づいて確認されます。
日本人と同等以上の報酬
育成就労外国人は、日本国内で雇用される労働者です。
労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などが適用され、外国人であることを理由に不当に低い報酬を設定することは認められません。
同等の業務に従事する日本人労働者と比較し、技能、経験、責任などを踏まえた適正な報酬を設定する必要があります。
育成期間中であることは、安価な労働力として雇用してよい理由にはなりません。
特定技能1号へ移行するための要件
育成就労制度は、特定技能1号への移行を基本的なキャリアルートとしています。
原則3年間の育成を経て、必要な技能水準と日本語能力を満たした場合、特定技能1号への在留資格変更許可申請を行います。
技能要件
特定技能1号への移行には、原則として分野別に定められた技能試験への合格が必要です。
育成就労制度では、技能検定3級相当の試験や、特定技能1号評価試験など、分野ごとに定められた方法で技能水準を確認します。
すべての分野で同じ試験を受けるわけではなく、担当業務区分によって試験内容も異なります。
日本語要件
特定技能1号へ移行する際は、原則としてA2相当以上の日本語能力が求められます。
A2相当は、日本語能力試験N4などが目安となる水準です。
ただし、対象分野によっては、より高い日本語能力や分野独自の試験が求められる場合があります。「すべての分野でN4だけに合格すれば移行できる」と理解しないよう注意してください。
移行は自動ではない
技能試験と日本語試験へ合格しても、在留資格が自動的に特定技能1号へ変わるわけではありません。
企業と本人は、特定技能雇用契約を締結し、1号特定技能外国人支援計画を作成するなど、特定技能制度の要件を整えたうえで在留資格変更許可申請を行います。
受入れ企業も、特定技能所属機関としての基準を満たさなければなりません。
不合格時に延長できる場合がある
育成就労期間中に一定の技能水準へ達しているものの、特定技能1号への移行に必要な試験へ合格できなかった場合などには、一定の要件のもとで、最大1年の範囲で育成就労を継続できる仕組みがあります。
ただし、試験へ不合格になれば誰でも自動的に1年間延長できるわけではありません。
延長の要件、育成状況、再受験の見込みなどを確認したうえで判断されます。
本人意向による転籍の仕組み
育成就労制度では、技能実習制度と異なり、一定の要件を満たした場合に本人意向による転籍が認められます。
これは外国人の権利保護とキャリア形成を図るための重要な変更です。
本人意向による転籍の主な条件
具体的な条件は分野によって異なりますが、主に次のような要件があります。
- 同一の業務区分内で転籍すること
- 転籍前の企業で一定期間就労していること
- 一定の技能水準に達していること
- 一定の日本語能力を有していること
- 転籍先企業が受入れ要件を満たしていること
- 転籍先で新しい育成就労計画の認定を受けること
転籍までに必要な就労期間は1年が基本ですが、分野によって1年を超える期間が設定される場合があります。
本人が希望すれば、入社直後から無条件で自由に転籍できる制度ではありません。
やむを得ない事情がある場合の転籍
受入れ企業の倒産、重大な法令違反、暴行、ハラスメント、契約と異なる労働条件など、やむを得ない事情がある場合には、本人意向による通常の転籍とは別に、受入れ先の変更が認められる仕組みがあります。
企業は、転籍を防止するために本人のパスポートや在留カードを預かったり、違約金を定めたりしてはいけません。
転籍を前提とした定着策が必要
企業が採用費や教育費を負担しても、外国人が必ず3年間同じ企業で働くとは限りません。
定着を図るには、転籍を制限するのではなく、本人が継続して働きたいと考える環境を整える必要があります。
- 採用時の説明と実際の業務を一致させる
- 適正な賃金を支払う
- 不明確な控除を行わない
- 技能に応じて評価・昇給する
- 日本語学習の時間を確保する
- ハラスメントを防止する
- 相談窓口を設ける
- 特定技能移行後のキャリアを示す
- 住居や生活上の問題へ対応する
監理支援機関の役割
育成就労制度では、技能実習制度の監理団体に代わり、許可制の監理支援機関が設けられます。
監理支援機関の許可申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から開始されます。
監理支援機関が行う主な業務
監理支援機関は、主に次のような役割を担います。
- 育成就労計画の作成支援
- 受入れ企業への監査
- 受入れ企業への訪問指導
- 外国人からの相談対応
- 転籍支援
- 制度運用に関する企業への助言
- 不適正な受入れを把握した場合の対応
監理支援機関には、中立性や独立性を確保するための許可基準が設けられています。
登録支援機関と混同しない
「監理支援機関」と「登録支援機関」は異なる制度上の機関です。
監理支援機関は、育成就労制度における監理・支援を行います。
登録支援機関は、特定技能1号外国人に対する法定支援を、特定技能所属機関から委託されて実施します。
育成就労外国人の受入れに関して、登録支援機関が当然に監理を行うわけではありません。育成就労の監理を行うには、監理支援機関としての許可が必要です。
企業の責任はなくならない
監理支援機関へ依頼しても、受入れ企業の雇用主としての責任がなくなるわけではありません。
企業は、次の事項を自ら適切に管理しなければなりません。
- 賃金の支払い
- 労働時間
- 休憩・休日
- 安全衛生
- ハラスメント防止
- 日々の技能指導
- 雇用条件の遵守
- 社内での相談対応
- 育成就労計画の実施
監理支援機関へ任せきりにせず、企業内にも制度を理解する担当者を置く必要があります。
技能実習制度からの経過措置
育成就労制度が2027年4月1日に始まっても、同日にすべての技能実習が終了するわけではありません。
施行日前に技能実習を開始している人や、施行日前に一定の手続が進んでいる人については、経過措置が設けられています。
施行日時点で行われている技能実習
2027年4月1日時点で現に行われている技能実習は、経過措置に基づき、その後も継続できる場合があります。
現在の技能実習生が施行日に一律で育成就労へ変更されるわけではありません。
企業は本人ごとに、次の事項を確認する必要があります。
- 現在の技能実習段階
- 技能実習計画の認定日
- 在留期限
- 施行日時点の実習期間
- 次の段階へ移行できるか
- 特定技能へ移行する予定があるか
施行日前に手続を進めた外国人
施行日前に技能実習計画の認定と在留資格認定証明書の交付を受けた外国人については、2027年6月30日までに入国するなど、一定の条件のもとで技能実習を開始できる経過措置があります。
そのため、技能実習制度と育成就労制度は一定期間併存します。
ただし、「おおむね2030年まで一律に併存する」と決めつけるのではなく、各技能実習生の計画・入国日・段階によって判断する必要があります。
技能実習3号への移行条件
育成就労制度の施行後に技能実習3号へ進むには、施行日時点で技能実習2号を一定期間行っていることなどの条件があります。
すべての技能実習2号修了者が、施行後にそのまま3号へ進めるわけではありません。
既存の技能実習生がいる企業は、育成就労の新規採用準備とは別に、現在の実習生の経過措置を個別に確認しましょう。
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育成就労と特定技能1号の違い
育成就労と特定技能1号は連続性のある制度ですが、採用時点で求められる技能や企業の役割が異なります。
| 比較項目 | 育成就労 | 特定技能1号 |
| 主な目的 | 人材育成と人材確保 | 人材確保 |
| 技能水準 | 就労を通じて1号水準を目指す | 就労開始時から一定の技能が必要 |
| 基本的な期間 | 原則3年 | 原則として通算5年まで |
| 技能の確認 | 育成期間中に段階的に評価 | 原則として採用前の試験等で確認 |
| 日本語能力 | 入国時等の基準から段階的に向上 | 原則として分野別の要件を事前に満たす |
| 計画 | 育成就労計画が必要 | 育成就労計画は不要 |
| 監理・支援 | 監理支援機関 | 1号特定技能外国人支援計画・登録支援機関 |
| 本人意向による移動 | 一定の要件で転籍可能 | 在留資格上の条件を満たせば転職可能 |
| 適した採用目的 | 将来の人材を育てたい | 一定技能を持つ人材を採用したい |
育成就労は特定技能の単なる下位資格ではない
育成就労は、特定技能1号より技能が低い外国人を安く雇用するための資格ではありません。
企業には、特定技能1号水準へ育てる責任があり、そのための計画、指導、評価、日本語能力向上への対応が求められます。
特定技能1号も完全な即戦力とは限らない
特定技能1号外国人は、原則として一定の技能と日本語能力を試験などで確認されています。
しかし、試験に合格していても、採用初日から自社独自の作業を一人で行えるとは限りません。
使用する機械、作業手順、安全ルール、接客方法、社内制度などについては、採用後の教育が必要です。
両制度を併用する方法
企業によっては、育成就労と特定技能1号を併用する方法も考えられます。
たとえば、現在必要な一定技能を持つ人材は特定技能1号で採用し、将来の人材は育成就労で育てる方法です。
採用時期と技能水準の異なる人材を組み合わせることで、人員計画を複線化できる可能性があります。
ただし、受入れ人数、指導体制、費用、担当業務を整理し、現場が対応できる範囲で進める必要があります。
企業が押さえるべき実務上のポイント
育成就労制度を利用する際は、対象分野を確認するだけでなく、実際に3年間の育成を実施できる体制を作る必要があります。
採用人数より育成可能人数を確認する
人手不足だからといって、受入れ可能な上限まで採用するのが適切とは限りません。
採用人数を決める前に、次の事項を確認しましょう。
- 指導担当者の人数
- 指導へ使える時間
- 日本語学習を支援する体制
- 技能評価の方法
- 相談担当者
- 住居の確保
- 監理支援機関の対応能力
- 原則3年間の費用
- 特定技能移行後の配置先
制度上受け入れられる人数と、自社が責任を持って育てられる人数は別です。
現場で実行できる育成計画を作る
育成就労計画は、行政へ提出するためだけの書類ではありません。
次のように、年度ごとの目標を具体化しましょう。
1年目
- 基本作業を理解する
- 安全ルールを守る
- 基本的な報告・連絡・相談を身に付ける
- 職場で必要な日本語を学ぶ
2年目
- 担当業務の範囲を広げる
- 品質や効率を意識する
- 一定の判断を伴う作業を経験する
- 技能・日本語試験の準備を進める
3年目
- 特定技能1号水準の業務を安定して行う
- 必要な試験を受験する
- 特定技能移行後の役割を確認する
- 必要に応じて後輩への説明を経験する
具体的な育成内容は、各分野の運用要領と認定された育成就労計画に基づいて設定してください。
日本語学習と現場コミュニケーションを両立する
日本語試験へ合格するための学習と、現場で安全に働くための日本語は同じではありません。
企業は、外部講座や教材による試験学習に加え、職場で必要となる次のような表現を教える必要があります。
- 安全指示
- 危険箇所
- 機械や道具の名称
- 数量や時間
- 異常発生時の報告
- 体調不良の申出
- 顧客への説明
- 同僚への連絡
企業側も、やさしい日本語、写真、図、動画、多言語資料などを使い、伝わりやすい指導方法を整えましょう。
原則3年間の費用を試算する
育成就労外国人の受入れには、賃金以外にも費用がかかります。
- 募集・採用費
- 入国手続費
- 渡航費
- 監理支援費
- 住居費
- 家具・生活用品費
- 日本語教育費
- 技能教育費
- 試験受験費
- 通訳・翻訳費
- 社内担当者の人件費
- 転籍・帰国時に生じる可能性のある費用
- 特定技能移行時の費用
全国共通の公定相場があるわけではありません。
初期費用だけでなく、原則3年間の総額を複数のケースで試算し、途中で転籍や帰国が生じた場合も想定しましょう。
特定技能移行後の待遇を考える
特定技能1号へ移行しても、仕事内容や待遇が変わらなければ、本人が他社への転職を検討する可能性があります。
育成期間中から、次の内容を整理することが重要です。
- 特定技能移行後の担当業務
- 昇給条件
- 手当
- 評価基準
- 資格取得支援
- 後輩指導の可能性
- 役職登用
- 特定技能2号を目指せる分野か
実現できない昇進、長期雇用、永住許可などを安易に約束せず、企業として提供できる現実的なキャリアを示しましょう。
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採用前に確認したいチェックリスト
育成就労制度の利用を検討している企業は、次の項目を確認しましょう。
- 施行日が2027年4月1日であることを把握しているか
- 自社の分野が育成就労の対象17分野に含まれるか
- 外国人へ担当させる業務区分が対象か
- 事業所が分野別の要件を満たすか
- 分野別運用方針を確認したか
- 分野別運用要領を確認したか
- 分野独自の上乗せ基準を確認したか
- 受入れ人数の基準を確認したか
- 採用人数ではなく育成可能人数を算出したか
- 原則3年間の育成目標を設定したか
- 技能指導担当者を決めたか
- 副担当者を確保したか
- 指導時間を勤務計画へ組み込めるか
- 日本語学習を支援できるか
- 現場で必要な日本語を整理したか
- 技能評価の方法を決めたか
- 評価と昇給を連動させられるか
- 適正な賃金を設定しているか
- 労働時間や控除の管理に問題がないか
- 外国人が相談できる窓口を設けられるか
- 監理支援機関の候補を比較したか
- 企業と監理支援機関の役割を整理したか
- 原則3年間の費用を試算したか
- 本人意向による転籍を理解しているか
- 転籍が生じた場合の対応を考えたか
- 特定技能1号への移行支援を計画したか
- 移行後の業務と待遇を決めたか
- 既存の技能実習生に関する経過措置を確認したか
- 最新の申請様式と受付時期を確認したか
育成就労と特定技能のどちらを選ぶべきか
育成就労と特定技能1号のどちらが適しているかは、企業が必要とする人材の技能水準と、自社の育成能力によって異なります。
育成就労が適している可能性がある企業
次のような企業は、育成就労を活用できる可能性があります。
- 3年間をかけて人材を育成できる
- 現場に指導担当者がいる
- 教育時間を確保できる
- 日本語能力の向上を支援できる
- 技能評価の仕組みがある
- 特定技能1号への移行後まで計画できる
- 外国人からの相談へ対応できる
- 転籍を前提に職場環境を改善できる
- 原則3年間の費用を負担できる
特定技能1号が適している可能性がある企業
次のような企業は、特定技能1号を優先して検討する方法があります。
- 一定の技能を持つ人材を早期に採用したい
- 3年間の育成を行う余力が少ない
- 対象分野で試験合格者を確保できる
- 1号特定技能外国人支援計画を実施できる
- 登録支援機関との連携体制がある
- 既に特定技能外国人の受入れ実績がある
制度の優劣ではなく採用目的で選ぶ
育成就労は新制度だから危険、特定技能は既存制度だから必ず安全という単純な関係ではありません。
育成就労は、将来の人材を自社で育てたい企業に適しています。
特定技能1号は、一定の技能を持つ人材を採用したい企業に適しています。
自社が必要とする業務、採用時期、教育能力、費用、将来の配置を整理し、必要に応じて両制度を組み合わせることが現実的です。
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まとめ
育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的として2027年4月1日から始まる外国人雇用制度です。在留資格「育成就労」により、外国人を原則3年間受け入れ、就労を通じて特定技能1号水準の技能と日本語能力を備えた人材へ育成します。
2026年8月時点では17分野が対象ですが、対象分野に属する企業であっても、すべての職種や業務で受け入れられるわけではありません。企業は、分野別運用方針や運用要領を確認し、実際に担当させる業務区分、事業所要件、受入れ人数、分野独自の基準を把握する必要があります。また、育成就労を修了しても特定技能1号へ自動的に移行できるわけではなく、試験や在留資格変更の手続が必要です。
制度を有効に活用するには、採用人数の確保だけでなく、現場で実行できる育成計画、指導担当者、日本語学習、技能評価、適正な労務管理、相談体制、特定技能移行後のキャリアまで一体的に整えることが重要です。安価な労働力を確保する手段ではなく、外国人を計画的に育成し、能力に応じて評価し、継続して働きたいと思われる職場をつくる制度として捉えましょう。




