特定技能外国人の採用を検討する企業が増える一方で、「最初に何を確認すればよいのか分からない」「採用が決まってから住居や支援体制の準備に追われた」というケースも少なくありません。特定技能外国人の受け入れでは、候補者を集める前から対象業務、雇用条件、支援方法、社内の役割分担を整理しておく必要があります。
準備が不十分なまま採用を進めると、在留申請の遅れ、雇用条件の認識違い、現場での教育不足、入社後の早期退職などにつながる可能性があります。この記事では、特定技能外国人を受け入れる企業が採用前に確認すべき実務ポイントを、制度確認から入社後の定着準備まで順を追って解説します。
※本記事の内容は作成・更新時点の情報に基づいています。関係法令、分野別運用方針、申請手続、支援体制の要件などは変更される可能性があるため、実際の受け入れに際しては、出入国在留管理庁および各分野を所管する省庁の最新情報をご確認ください。
採用活動を始める前に制度上の対象を確認する

特定技能制度は、すべての企業や業務で自由に利用できる制度ではありません。まずは自社の事業、外国人に任せる業務、採用予定者の要件が制度に合っているかを確認する必要があります。
自社の業務が特定技能の対象か確認する
最初に確認すべきなのは、自社が特定技能の対象分野に属しているかではなく、外国人が実際に担当する業務が対象となる業務区分に含まれているかという点です。同じ業界の企業であっても、担当させる業務によっては特定技能外国人を配置できない場合があります。
2026年1月23日には、特定技能制度と育成就労制度について新たな分野別運用方針が決定されましたが、新たに定められた一部の分野や業務区分は、省令等の準備が整ってから受け入れ可能となります。企業は業界名だけで判断せず、最新の分野別運用方針と所管省庁の運用要領を確認しなければなりません。
確認したい主な項目は、次のとおりです。
- 自社が属する特定産業分野
- 外国人へ担当させる業務区分
- 付随的に認められる業務の範囲
- 直接雇用または派遣の可否
- 分野別協議会への加入要件
- 事業所や企業に求められる追加基準
- 受け入れ人数に関する分野独自の条件
採用候補者が必要な要件を満たすか確認する
特定技能1号で働くためには、原則として分野別の技能試験と日本語試験への合格などにより、一定の技能と日本語能力を備えていることが確認されなければなりません。一方、技能実習2号を良好に修了し、対応する分野へ移行する場合など、試験が免除される経路もあります。
合格証や修了歴だけで採用を決めず、希望する業務区分と本人が保有する資格・移行経路が一致しているかを確認しましょう。在留カードの資格名だけでは、採用後に予定する業務へ従事できるか判断できないため、必要に応じて行政書士などの専門家へ相談することが重要です。
採用前に確認したい本人情報には、次のようなものがあります。
- 現在の在留資格と在留期限
- 技能試験・日本語試験の合格状況
- 技能実習から移行する場合の職種・作業
- 過去の在留歴と就労歴
- 退職予定日と入社可能日
- 海外在住者の場合の渡航準備状況
- 担当業務に必要な資格や講習の有無
受入れ機関としての基準を点検する
特定技能外国人を受け入れる企業には、適切な雇用契約を締結していること、法令を遵守していること、支援体制を備えていることなどの基準があります。特定技能外国人の報酬や労働時間は、日本人が同等の業務へ従事する場合と同等以上でなければなりません。
税、社会保険、労働関係法令に関する不備や、保証金・違約金を伴う不適切な契約がある場合は、受け入れに影響する可能性があります。採用活動を始める前に、人事担当者だけでなく、経営者、労務担当者、現場責任者を交えて自社の適格性を点検しましょう。
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雇用条件と採用計画を具体化する
制度上の対象を確認した後は、担当業務、賃金、勤務場所、入社時期などを具体化します。雇用条件が曖昧な状態で候補者を募集すると、採用後に説明との違いが判明し、早期退職や労務トラブルにつながりかねません。
担当業務と必要な人材像を明確にする
「人手が足りないから外国人を採用する」というだけでは、適切な人材像を設定できません。採用する前に、担当させる作業、必要な技能、日本語能力、勤務時間、就業場所、将来任せたい役割を整理する必要があります。
特定技能外国人は一定の技能を持つ人材ですが、自社独自の機械、作業方法、品質基準、接客ルールまで理解しているとは限りません。採用時に必要な能力と、入社後に教育する内容を分けて考えることで、候補者に過度な即戦力性を求めずに済みます。
必要な人材像を整理する際は、次の項目を具体化しましょう。
- 担当する主業務
- 付随して行う可能性がある業務
- 必要な技能と経験
- 職場で必要な日本語能力
- 夜勤・交替勤務・出張の有無
- 就業場所と異動の可能性
- 採用予定人数と入社希望時期
- 入社後1年程度で期待する役割
日本人と同等以上の雇用条件を整える
特定技能外国人の報酬は、同等の業務に従事する日本人と同等以上であることが必要です。最低賃金を上回っているだけでは足りず、職務内容、責任、経験、技能などを踏まえて合理的な賃金を設定しなければなりません。
基本給だけでなく、手当、昇給、賞与、時間外労働の割増賃金、福利厚生の適用についても、日本人社員との公平性を確認しましょう。採用時に提示した条件と実際の給与や業務が異なると、本人の不信感や転職の原因になるため、理解できる言語や方法で丁寧に説明することが重要です。
| 確認項目 | 採用前に整理する内容 |
| 賃金 | 日本人の比較対象と算定根拠 |
| 勤務時間 | 始業・終業、休憩、交替勤務 |
| 休日 | 年間休日、曜日、休暇制度 |
| 手当 | 通勤、夜勤、資格、住宅など |
| 控除 | 社会保険、税、住居費の内訳 |
| 昇給 | 評価時期と判断基準 |
| 就業場所 | 配属先と変更の可能性 |
採用から入社までの工程を逆算する
海外から採用する場合は、雇用契約、在留資格認定証明書交付申請、査証取得、渡航準備などに時間がかかります。国内在住者を採用する場合も、在留資格変更、前職の退職、転居などを考慮しなければなりません。
入社希望日だけを先に決めるのではなく、必要な手続と準備期間を工程ごとに逆算しましょう。申請が予定より長引く場合もあるため、現場の人員計画は特定技能外国人の入社だけに依存せず、一定の余裕を持たせることが大切です。
対象分野・業務の確認
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候補者の募集・選考
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雇用条件の説明・契約
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支援計画と在留申請の準備
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住居・入社環境の整備
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入国または在留資格変更
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入社・オリエンテーション
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支援体制と社内の役割分担を整える

特定技能1号の受入れ企業は、外国人が日本で安定的に生活・就労できるよう、1号特定技能外国人支援計画を作成して支援を実施します。支援を登録支援機関へ委託する場合でも、企業が雇用主として行うべき労務管理や現場教育まで外部へ任せられるわけではありません。
自社支援か登録支援機関への委託かを決める
1号特定技能外国人への支援は、受入れ企業が自社で実施する方法と、登録支援機関へ委託する方法があります。支援計画の全部を登録支援機関へ委託した場合、受入れ企業は支援体制に関する基準を満たしたものとみなされます。
自社支援を選ぶ場合は、支援経験、対応言語、支援責任者・支援担当者の体制などを確認する必要があります。なお、2027年4月1日からは、支援を行う事業所ごとに常勤の支援責任者・支援担当者を選任することなど、支援体制に関する要件の改正が予定されているため、将来の受け入れも見据えて最新情報を確認しましょう。
登録支援機関を選ぶ際の主な確認項目は、次のとおりです。
- 自社の対象分野に関する経験
- 対応できる言語
- 担当者と支援対象者の人数
- 対応可能な地域
- 夜間・休日の緊急連絡体制
- 公的手続や医療機関への同行
- 日本語学習支援の内容
- 月額料金と追加料金
- 退職・転職時の対応方針
義務的支援の実施方法を確認する
1号特定技能外国人への支援には、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保の支援、生活オリエンテーション、公的手続への同行、日本語学習機会の提供、相談対応、日本人との交流促進、一定の場合の転職支援、定期面談などがあります。支援計画は在留申請時に提出し、変更が生じた場合には届出が必要です。
支援を形式的に実施するだけでなく、本人が内容を理解できる言語で説明し、相談しやすい環境を整える必要があります。定期面談は原則として3か月に1回以上、外国人本人とその上司等を対象に行うため、担当者の予定と通訳体制もあらかじめ確保しましょう。
企業内の担当者と責任範囲を決める
特定技能外国人の受け入れ業務を人事担当者1人へ集中させると、担当者の不在時に手続や相談対応が止まる可能性があります。採用、在留手続、生活支援、現場教育、労務管理について、それぞれの担当者と代替者を決めておきましょう。
登録支援機関へ委託する場合も、企業側の窓口担当者が必要です。相談内容の共有方法、問題が発生した場合の連絡順序、企業と登録支援機関のどちらが対応するかを明確にしておくと、責任の押し付け合いや対応漏れを防げます。
| 実務 | 主な担当候補 |
| 採用・雇用契約 | 人事・採用担当 |
| 在留手続の連絡 | 人事・専門家 |
| 支援計画の管理 | 支援責任者・登録支援機関 |
| 業務教育 | 現場責任者・指導担当者 |
| 労働時間・賃金 | 労務・経理担当 |
| 生活相談 | 社内相談担当・登録支援機関 |
| 緊急対応 | 責任者・代替担当者 |
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特定技能外国人の受け入れ費用とは?企業が押さえたい費用の内訳と見積りの考え方
住居・教育・職場環境を入社前に準備する
在留申請が許可されても、住居、生活用品、教育担当者などの準備が間に合わなければ、安心して就労を始めることはできません。入社初日から仕事を任せることだけを考えず、生活と職場の両面を整える必要があります。
適切な住居と生活開始の環境を整える
特定技能1号では、住居確保に関する支援が義務的支援の一つとされています。企業または登録支援機関は、賃貸物件探しへの同行、保証人や保証会社の利用支援、社宅の提供など、本人が適切な住居を確保できるよう支援します。
社宅を用意する場合は、広さ、通勤時間、プライバシー、共同生活のルールを確認しましょう。家賃や光熱費などを本人へ負担させる場合は、金額と内訳を明確に説明し、不当に高額な請求や本人が理解していない給与控除が生じないよう注意が必要です。
入社前に確認したい生活準備には、次のものがあります。
- 住居と入居日の確定
- 家具・家電・寝具の準備
- 水道・電気・ガスの利用開始
- 通勤経路と交通手段
- 携帯電話や通信環境
- 銀行口座の開設方法
- 日用品や食料品を購入できる場所
- 医療機関と緊急連絡先
業務教育と安全衛生教育を設計する
特定技能外国人は一定の技能を持つ人材ですが、自社独自の設備、業務手順、安全規則を最初から把握しているわけではありません。担当業務ごとに教育項目を整理し、誰が、いつ、どのように教えるかを決めましょう。
安全衛生教育では、口頭説明だけに頼らず、写真、図、動画、実演、やさしい日本語などを組み合わせることが有効です。本人に説明内容を言い直してもらったり、実際の作業で確認したりすることで、理解したつもりの状態を防ぎやすくなります。
教育計画には、次の内容を含めると実務へ落とし込みやすくなります。
- 入社初日のオリエンテーション
- 就業規則と職場ルール
- 安全衛生・緊急時の対応
- 基本的な作業手順
- 機械・器具の使用方法
- 品質基準と禁止事項
- 報告・連絡・相談の方法
- 習得状況を確認する時期
日本人社員への受け入れ教育も行う
外国人本人だけに教育を行っても、受け入れる側の社員が制度や文化の違いを理解していなければ、職場で孤立する可能性があります。外国人だから特別扱いするのではなく、必要な配慮と公平な評価を両立させることが重要です。
現場社員には、分かりやすい指示の出し方、曖昧な表現を避ける方法、ハラスメント防止、宗教や生活習慣への基本的な配慮などを共有しましょう。「本人の日本語力が足りない」と一方的に考えず、企業側も伝え方を改善する姿勢が定着につながります。
入社後の届出・評価・定着まで準備する

特定技能外国人の受け入れは、入社した時点で完了するものではありません。雇用契約の履行、各種届出、定期面談、技能評価、相談対応を継続し、安心して働ける環境を維持する必要があります。
各種届出と在留期限の管理方法を決める
受入れ企業には、出入国在留管理庁やハローワークへの各種届出が求められます。雇用契約、支援計画、支援委託契約の変更や終了、受け入れが困難になった場合などには、所定の随時届出が必要です。
本人の在留期限、雇用契約期間、パスポートの有効期限などを一覧で管理し、更新準備を早めに始めましょう。担当者の記憶に依存せず、管理表やカレンダーで期限を共有し、担当者が変わっても対応できる状態にすることが大切です。
入社後の評価と面談を計画する
特定技能外国人にも、日本人社員と同様に、明確な評価基準と定期的なフィードバックが必要です。仕事を覚えても賃金や役割が変わらなければ、本人が将来性を感じられず、転職を検討する可能性があります。
業務の正確性、安全意識、日本語能力、報告・連絡・相談、資格取得など、評価項目を本人が理解できる形で示しましょう。支援計画上の定期面談とは別に、現場責任者や人事担当者が短い面談を定期的に行うと、小さな不満や生活上の問題を早期に把握できます。
受け入れ準備の最終チェックを行う
採用決定後は、制度、雇用、支援、住居、教育、届出の準備がそろっているかを入社前に再確認します。特定技能外国人本人だけでなく、現場責任者、支援担当者、登録支援機関にも予定と役割を共有しましょう。
次のチェックリストに未確認項目がある場合は、担当者と期限を決めて対応してください。
- 自社の業務が対象分野・業務区分に含まれている
- 採用候補者の試験・移行要件を確認した
- 受入れ機関の基準を満たしている
- 雇用条件を日本人と比較して確認した
- 本人が理解できる方法で労働条件を説明した
- 入社までの工程と担当者を決めた
- 支援を自社で行うか委託するか決めた
- 支援計画の実施方法を整理した
- 社内窓口と代替担当者を決めた
- 住居と生活開始の準備を整えた
- 業務教育と安全衛生教育を設計した
- 日本人社員への説明を行った
- 在留期限と届出の管理方法を決めた
- 入社後の評価と面談を計画した
- 緊急時の連絡先と対応手順を共有した
まとめ
特定技能外国人の受け入れ準備では、候補者を募集する前に、自社の業務が対象分野・業務区分に該当するか、受入れ機関としての基準を満たしているかを確認する必要があります。そのうえで、雇用条件、支援方法、住居、教育、社内の役割分担を具体化し、入社日から逆算して準備を進めることが重要です。
登録支援機関へ支援を委託する場合でも、賃金、労働時間、安全衛生、業務指導など、企業が雇用主として負う責任は残ります。制度上の手続だけを整えるのではなく、本人が安心して働き続けられる職場環境と評価・相談体制まで準備することが、特定技能外国人の採用と定着を成功へ近づけます。



